前のブログで、琴高仙人の大皿と銅小花瓶を紹介しました。
今回は、これらの元となった琴高仙人の絵画です。
相当昔に購入した品です。今からすれば法外な値段でした。当時、狩野派というだけで、高値が付きました。こちらも、ずぶの素人で、業者の言うまま(≫≪;) ところが、その後、床の間の無い家が増えたせいもあり、掛軸の値は古伊万里以上に急降下。今なら、10~20分の一が相場でしょう。 トホホ(^^;
気をとりなおして、床の間に掛けてみました。
狩野幸信筆 『琴高仙人図』、紙本墨画淡彩 47ⅹ165㎝、3幅、江戸中期。
狩野常川幸信:享保2年(1717)-明和7年(1770)、江戸時代中期の画家。浜町狩野家三代目。
典型的な狩野派の絵です。多くの狩野派の絵師が、琴高仙人を描いています。伝統的な画法を守ってきた狩野派ですから、画風に大きな違いはありません。
狩野派らしい線描で描かれた、謹厳実直な琴高仙人です。
中央図
右図
左図
琴高仙人もなかなか迫力があります。
琴高仙人は人気が高く、その図柄は、絵画、陶磁器に多く見られます。また、鋳造品、木彫品の置物や香炉もあります。
これらをみると、琴高仙人には2タイプあることがわかります。一つは何も持たずに鯉に乘るもの、もう一つは、巻物や書物を手に鯉に乘る仙人です。
今回の品は、後者です。琴高仙人が、智者であることを表しているのでしょう。
琴高仙人の表情は、生真面目。
鯉も一生懸命泳いでいます。
水や波の描き方も伝統的ですね。
琴高仙人図は、室町時代以降、好んで画題として取り上げられました。特に、漢画系の狩野派は、大家の手本を連綿として模写する粉本主義をとっていたので、琴高仙人のような古典的画題は、大きな変化なく描き継がれてきたのでしょう。
古伊万里の名品、「型物 琴高仙人鉢」や「芙蓉手琴高仙図七寸皿」は、今回の狩野幸信の琴高仙人図が描かれたのと同じ頃(江戸中期)に作られた品です。
けれども、この掛軸と古伊万里皿では、琴高仙人や鯉の描かれ方に大きな違いがあります。狩野派掛軸が古い琴高仙人図を踏襲しているのに対して、古伊万里皿では、仙人や鯉の描き方が実にユーモラスです。江戸時代中期には、古典的図柄をアレンジしたひょうきんな琴高仙人が生まれていたのです。
その理由は明らかではありません。当時の絵画は上流階級の注文品、それに対して、古伊万里は、高級品ではあっても、数作られた実用品です。少しホッコリできる絵柄が好まれたのかも知れません。
伝統を守ることは重要です。しかし、年月が経つにつれ、時代のフィーリングと離れていく事は避けられません。生成期にあふれ出ていたエネルギーも、守るだけでは次第に薄れ、枯れてゆきます。
これは、何も絵画に限ったことではありません。
能などの伝統芸能が、将来、博物館入りしないために、伝統を守りながら、新しい精神を注ぎこむ・・・・伝統と革新を、琴高仙人が空から問いかけているかのようです。
この歳で恋はおろか、鯉にも乗れませんが、せめてイルカには乗ってみたいものです。
もっとも、水中ロボットやバイクもあるので、イルカロボット位なら乗れる可能性はありそうです。
それにしても素敵なコレクションだと感心しています。それに、いつまでもこのような作品を作る伝統は受け継がれて欲しいものです。
骨董(古美術品ではなく我楽多)の価値は妙なものですね。金で評価するのがわかりやすいですが、時代の流行りも大きいです。いずれにしても、自己満足の世界ですから、傍から見ると滑稽(^.^)
墨絵の技法は学んだ事が有りませんが悪戯にシュンランを描いた事が有ります。
最初で最後でしたが筆の運びに躊躇いが出てしまいものになりませんでした。
難しいものですよね。
良いものを観せて頂きました。
三幅の絵を見て、掛け軸の効果は素晴らしいと思いました。これが一枚の絵だったら感動も薄れるのではないかなと思ってしまいます。
墨色の中に仙人の唇が紅いのでドキッとしました。(^_^;)
とてもいいものを見せていただいてありがとうございました。
私は絵心は全くないですが、以前、陶芸のをやっていたとき、絵付けで手が動かないのに驚きました。情けないような線になってしまいました。
彼らは、修行に修行を重ねるのですから・・・本物の見分け方のひとつですね。
でも今は、狩野派のような変化のない絵よりも、若冲や蕭白のようなものに人気があります。流行ですね。逆に、昔はとても手が出なかった品も、不人気品ですから入手できます。
床の間の無い家が増えたせいで、掛軸の値が急落しました。でも、かさばるし、簡単にはチェンジもできない額絵よりは、はるかに合理的だと思うのです。今は、室内の壁が広くとってありますから、十分に掛軸は掛けられると思うのですが。その点、外人は発想が柔軟ですから、壁に掛けて楽しんでいる人もあります。
水墨画といっても、実際は淡彩のものが結構あります。うまく色を使っている品は少ないですが。今回の品は、人物に彩色されているので効果的ですね。表情も微妙です。
ワタシの場合、伊万里に興味を持つまでは琴高仙人なんてのは知る由もありませんでしたので
この画題が江戸期には極めて人気の高い題材であったことは、ずっと後になってから知りました。
このような格調高い狩野派と比べると、確かに伊万里の陶工の絵付けはユーモラスで人間味を感じますよね。
今回の琴高仙人も散見されますが、雪中筍掘りほどはポピュラーでないですね。
伊万里生成期からある中国由来の画題がどうなふうに和様化したかも面白いテーマだと思います。
琴高仙人についても、いろんなジャンルを通して、統一してコレクションしているんですね。
一見、バラバラなようで、筋が通っているんですね。
さすが、故玩館です!
ところで、掛軸は安くなりましたよね。古伊万里の下落以上ですものね。
ただ、コレクションをする者にとっては追い風ですよね(^-^;
でも、これだけ数あると、適当なグループ分けができるものだと、この頃自分でも感心しています(^^;
大げさに言えば、博物学の原点かと(^.^)
掛軸も、下がってしまうとあまりありがたみを感じません。本当のコレクターではないのですね(^-^)