遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

祝gooブログ1000日 『光琳蒔絵武蔵野図鼓箱』

2022年03月06日 | 能楽ー工芸品

今日は、gooブログの1000日目です。ヨタヨタと更新しながら、なんとかここまで来ました(^^;

そこで、何か相応しい物はないかとゴソゴソさがし回り、奥に保管してあったのを探し出したのが今回の品です。

24.0cmx30.5㎝。高23.5㎝。江戸時代後期。

全面に、高蒔絵と螺鈿が施された鼓箱です。鼓箱の特徴として、蓋の上面がゆるやかなアールになっています。

鼓箱は、小鼓を保管しておくためのものです。他にもいくつか持っているのですが、これは別格、いわゆる大名道具と言われる物です。

20年程前、山形県酒田市を訪れた際、例によって地元の骨董屋をひやかしてまわりました。品物は乏しく、また、これといった物も見当たらずガッカリでした。ところが、ある店の奥に、オーラを放っている品が。すばらしい蒔絵の鼓箱です。しかし、値段を聞いてビックリ。高嶺の花でした(^^;

それからほどなくして、ネットオークションに似た品が出品されました。開始価格が高かったので、入札者は私一人。拍子抜けするほど簡単に落札できました。しかも、値段はあの時の品の十分の一。

鉛の象嵌はありませんが、光琳蒔絵といって良いでしょう。

盛上げ蒔絵と螺鈿を組合せて、草花をダイナミックに表現しています。

草花は、隣の面に繋がっています。

蓋の上面が、デザインの中心です。

ススキ、萩、蔦などの秋草が表されています。

そして、その奥には巨大な月がにぶい光を放っています。

これは、武蔵野図といわれる絵柄で、近世の大和絵に多く用いられました。大変風情がある和風デザインで、魯山人も好んでモチーフとしています。

蒔絵の大名道具には、細密蒔絵が施された豪華絢爛な物が多いのですが、このような粋なデザインの品もあります。

横から見ると技法がよくわかります。

金具は銀製です。

内側には、江戸布が貼られています。

 

隅に、小さく「寛哉作」と書かれています。江戸後期の蒔絵師、古満寛哉でしょうか。ただ、この時代の蒔絵作家の特定は非常に難しく、私の能力をこえていて、確証はありません。

箱の素材は桐です。

蓋をそっと乗せると・・・・

スーッとゆっくりと沈んでいき・・・・・

ピタリと納まります。まるで、錫の茶入れのようです。150年以上経た木製箱にもかかわらず、このように精巧な造りが保たれています。当時の技術の高さに驚きます。

鼓箱の中には、小鼓の仕覆が入っていました。

江戸布です。布は合せになっていて、内側は麻、外側は薄い絹です。

薄絹の布には刺繍が施されています。一瞬、桃山、辻が花!?との妄想が頭をよぎりましたが、そんなモノがそんじょそこらに存在するはずはありません(^^;  典型的な江戸刺繍でした(^.^)

洒落た仕覆に包まれた小鼓をもっていたのは、どこかのお姫様?それとも良家のお嬢様?

新たな妄想は膨らむばかりです(^^;

残念ながら、中に小鼓は入っていませんでした。

かわりに、江戸中期の蕪蒔絵鼓胴に古皮を組みました。

仕覆に包んで、

光琳蒔絵武蔵野図鼓箱に入れれば、

気分(だけ)は、小鼓名人(^.^)


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28 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (目覚めた孔雀)
2022-03-06 08:42:30
遅生さま
gooブログ1000日目、おめでとうございます
いつも素敵な骨董品のご紹介、ありがとうございます
素敵な骨董品、目の保養になります
これからもブログ更新、楽しみにしています

では。
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遅生さまおはようございます (けんすけ)
2022-03-06 08:42:54
ブログ1000日おめでとうございます
素敵な品々を拝見させて頂き1000日ですか
これからもお元気で素敵な品々をご紹介くださいね。
返信する
Unknown (mash1125(世界の街角))
2022-03-06 08:55:37
遅生さま
1000日おめでとうございます。
毎日はいけんさせていただいています。
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遅生さんへ (みこと)
2022-03-06 09:21:15
gooブログ開設1000日、おめでとうございます。
たったの1000日でこんなにも濃く、深く、格調高い内容。しかも、所蔵品が底をつくような気配が微塵もないことに、ただただ驚かされます。

どれだけお持ちなのか知識もお品も(笑)

ため息が出るような鼓箱ですね。一生手に取ることも目にする事さえなさそうで、貴重な機会を得ました。ありがとうございます。

気休めかもしれませんが、お米を小さな小さな(できたら細長い)木綿袋に入れて、水を入れたお茶碗と一緒に電子レンジでチンをして、ほのかに温まったものを目に載せてお休みになってみてはいかがでしょう。こちらではよくやります。

細かい作業で目を使うとどうしても目が冷える(=弱る)ので、温めてあげるとういう発想です。ついでに脳も温まるのか、よく眠れます。(私だけかも?)

ますますのご健勝、ご健筆をお祈りします。
返信する
小鼓を保管 (ゆり)
2022-03-06 09:29:29
こんにちは。

ブログ1000日おめでとうございます。
日曜日位ブログから離れようと思ってましたがラッキーでした(*^^*)

時代は違いますが、なんだか正倉院のお宝を見ているみたいですね~~
中に布が貼ってあると言うのも凝ってますし。

酒田で見た時の10分の1!!
いいお買い物をされました°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
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おはようございます(^^♪ (のり)
2022-03-06 09:52:05
ブログ開設 1000日 おめでとうございます。

これまで全く縁のなかった豊かな骨董の世界を学ばせて頂いております。 今後も楽しみにしております。
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目覚めた孔雀さんへ (遅生)
2022-03-06 10:33:16
いつもありがとうございます。
人間でも物でも、一ひねりして見たいものですが、ひねられるのはいつも自分の方です(^^;
今後とも宜しくお願い致します。
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けんすけさんへ (遅生)
2022-03-06 10:36:12
ブログネタをさがすのに四苦八苦です。
きちんと更新されるブログがうらやましいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
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mash1125さんへ (遅生)
2022-03-06 10:40:16
私も、古代や東南アジアの古陶磁に関心があり、「世界の街角」がとても勉強になります。
気が多いので、古代へも手を伸ばしそうになりますが、収拾がつかなくなると思って自重しています(^^;
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みことさんへ (遅生)
2022-03-06 10:50:47
雑多なモノに興味があり、気がつけばこんな状態になっていました(^^;
それらを何とか整理をせねば、とのことからブログを書くことになった次第です。
知識は付け焼刃、いかにも初めからわかっていたように書き、それらしい構成に仕立て上げているのですよ(^^;

米袋は良さそうですね。眠りが浅くなって嫌になります。効きそうです。

豪州、NZへ行くことはもうないと思います。みことさんのブログでディープな旅行をしている気分になれます(^.^)
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