遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

竹製能管筒

2023年01月10日 | 能楽ー実技

今回は、能管筒です。これは、能管を保管するための品ではなく、能管を入れて腰に差し、能舞台に上がる物です。笛方は、舞台に座ると、この筒からおもむろに能管を取り出し、右ひざに立てて待ちます。目立ちませんが、結構重要なアイテムです。

似たような品が多いので、今回は代表的な3本をとりあげました。

まず、一番オーソドックスな能管筒(写真中央)です。

ボロボロになった笛袋に入っていました。袋からすると江戸期か?

口径 3.6㎝、底径 3.1㎝、長 39.1㎝。江戸?

ボディは紙です。黒漆を全体に塗り固めています。いわゆる一閑張(いっかんばり)です。金具が失われています。

かなり使い込まれ、口元の漆が剥げています。

筒底には、穴が開いています。

黒漆に、華麗な蒔絵をした物もあります。ぐっとお値段が上がります。

次の能管筒(写真左)は樹脂製です。

口径 3.7㎝、底径 3.3㎝、長 40.2㎝。昭和。

かなりしっかりとしています。その分、重い。

樹脂製の能管筒は、扱いやすいです。が、熱成型しただけの粗雑な造りの物が多いです。その中で、この品は、内部を削って整えてあり、塗りも本格的です。しかし、樹脂は樹脂(^^;

さて、今回のブログのメインはこの品(写真右)です。

口径 3.3㎝、底径 3.0㎝、長 39.8㎝。明治?

非常に珍しい能管筒です。特注品でしょう。

形は同じですが、通常の一閑張(紙ー黒漆製)ではなく、竹でできています。竹という素材は通常少しひしゃげていますが、この品はほぼ真円に内外を削って成形しています。竹の内側を丸く削るのは、かなりの技と手間が要る作業です。その結果、筒の厚さは非常に薄く、手で持っても竹であることを感じません。

底が節になっていて、やはり水抜きの穴が開いています。

竹の繊維が縦に走っているので、薄くても強度があります。

途中には、節を削った跡がみえます。

しかし、竹は横方向の力には弱い。経年の劣化で、割れ目ができています。私が漆で補修しました。イマイチ(^^;

ま、上品な蒔絵の方に自然と目が行くので、割れ目は目立たないでしょう(^.^)

こうやって、3種類を並べてみると、

竹製能管筒の風格が際立ちます。

手にするとさらに違いが実感できます。ふわりと軽い。

プラ製 159g、紙漆製 が83gに対して、この品は、わずか47gなのです。

竹は高いポテンシャルをもった素材ですね(^.^)

 

コメント (2)
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