薄まる文化-13
長之氏が亡くなってもう11年が経つ。
いまや勢力図が塗り替えられ、
いろいろな唄うたいが台頭しているが、
なかでも私は今藤長一郎氏の唄が好きだ。
長一郎氏は京都での少年時代から文子先生の弟子で、
同じく学生時代に文子先生に習っていた、長之氏と同じ匂いがする。
天性の喉に上方の感性。
まだ中堅なのでタテの機会は少ないが、
何ともすいたらしい品のある唄だ。
長唄の初期、京都に坂田兵四郎という名人がいたのだが、
兵四郎が唄った「傾城道成寺」や「無間の鐘」などの唄を聞くと
(もちろん伝存している節からの想像)、
なぜだか長一郎氏とイメージがだぶってしまう。
私は密かに、長一郎氏は兵四郎の生まれ変わりではないかと思っている。
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tea break・海中百景
photo by 和尚