中国人材の求人・採用・転職(戸川利郎)

アメリカ金融業界の中国人採用(戸川利郎)

2008年12月中旬の土曜日。ニューヨーク・クイーンズ地区にあるチャイナタウン。貧しい住民が多い一角で、あるホテルだけがスーツ姿の男女でごった返していました。

上海銀行などの金融機関のため、中国最大の経済都市・上海の市当局が開いた「求人・転職フェア」。ターゲットは、金融危機によりウォール街で失職したか、将来に見切りを付けた「高級人材」だ。1000人もの中国系アメリカ人のビジネスマン、留学生が殺到し、各社ブースには長蛇の列ができました。

求められるのは、最先端のノウハウ、しっかりした中国語の能力を併せ持つ人材。1時間以上並んでも、面談時間はわずか約3分です。
「今後、数年間はショック状態が続くでしょう。次のキャリアを考えると、中国に帰るのも選択肢です」

上海近郊の出身で米国の大学を卒業後、ウォール街の投資銀行に勤める男性(40)は企業パンフレットを片手に、こう話します。

今回、170もの幹部職の求人が参加企業29社から寄せられました。情報技術(IT)バブル崩壊などで、株価が低迷した2002年のフェアでは、7社からの求人数は約50にすぎませんでした。

「上海を金融センターにするペースは、金融危機があっても、遅らせはしない」と、上海市金融サービス事務室の部長は豪語しました。

2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した中国にとって、国際金融分野の未熟さ、人材不足が“泣き所”とされてきました。そこへ来て、ウォール街の華人金融人材約3000人をはじめ多数が獲得対象となる空前の買い手市場の到来です。

ようやく多数の「高級人材」が必要とされるほど、金融分野が成長してきた現在、弱点を手っ取り早く補い、強化する千載一遇のチャンスが期せずして訪れたことになります。部長の言葉に熱がこもるのも当然です。

中国紙によると、北京や広東省、江蘇省、浙江省でも、同様の「訪米ツアー」が次々に計画されています。

標的は人材だけではありません。

2009年2月初めには、不動産物件の購入希望者のため、サンフランシスコ、ニューヨークなどを回る10日間のツアーも予定されています。北京の不動産情報サイトが募集したところ、約400人が申し込んだ。投資を考える富裕層が多く、お目当ては30万~50万ドル(約4500万円)の物件だといいます。

資本規制を敷く中国経済は、金融自由化に至っていないことが幸いし、金融危機の直撃を免れました。欧米が余裕を失う中、政府の意向を受けた大型国有企業などが、したたかに外国の資源企業などを「買い」に出る動きも目立ってきました。

北京で2009年12月2日開かれた国際M&A(合併・買収)シンポジウム。「金融危機は企業買収の得難い好機。逃してはならない」。危機を逆手にとるべきとの指令が政府関係者から相次ぎました。参加した商務省国際貿易経済協力研究院の研究員(60)は「金融危機後、中国企業の買収を阻止しようというムードが海外で弱まった」として、資源、金融、製造業ともに買収の動きが活発化すると見ます。どの業界も、景気後退で買いやすくなっています。

中国紙によると、鉄鋼大手、武漢鋼鉄は2009年12月、豪州・鉄鉱石企業によるプロジェクトの権益の50%を取得したといいます。中国海洋石油(CNOOC)傘下の油田採掘会社は11月、24億ドルでノルウェーの採掘会社を買収しました。中国指導部のエネルギー外交も再び本格化し始めました。李克強・筆頭副首相は早々と12月下旬、インドネシア、エジプト、クウェートの3か国を歴訪しました。

世界的な景気後退は輸出産業を中心に中国経済にも影響を及ぼしています。だが、もがき苦しむ米欧の間隙(かんげき)を縫って、チャイナ・パワーは存在感を増しています。


戸川利郎(中国人材コンサルタント)

参考:
http://toanews.com/
https://furukawakiko.com/tech/page285.html

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