ギリシャ神話あれこれ:アルケスティスの死(続)

 
 その後アドメトスは、愛するアルケスティスとともに幸せに暮らすが、あるとき俄かに病に倒れる。まるで死神に魅入られたかのように、あれよあれよと言う間に重病となり、ついには死に到るかと思われたとき、彼はアポロンの約束を思い出す。
 で、莫大な賞金をかけて、自分の代わりに死を志願する者を募るのだが、誰も名乗り出ない。年老いた両親に頼み込むが、彼らもまた、老い先短い命を惜しんで承諾しない。天命に逆らって寿命を縮めるなど不敬なことだ、と言い訳して。

 すると、最愛の妻アルケスティスが、では自分が身代わりになりましょう、と申し出る。たちまち彼女は瀕死の状態に。
 アドメトスは、生に固執した老父母をなじるが、逆に、お前こそ同罪だ、妻を犠牲にしおってからに、と罵られる。彼は、妻なしに生き延びても意味がない、と嘆く。

 さて。この騒動の最中にひょっこり現われたのが、酔っ払ったヘラクレス。

 彼は8つ目の難業を果たしにトラキアへと向かう途中、友人アドメトスに会いにペライの館に立ち寄ったのだった。で、それどころではないアドメトスは、代わって十分に接待するよう部下に言いつけた。
 が、酒乱ヘラクレス、すっかりできあがってしまうと、客に主人が顔を見せんとはけしからんー! と、押しかけてきたのだった。
 と、そこには、アルケスティスを失って、悲嘆に暮れるアドメトスらの姿……

 はたと酔いの醒めたヘラクレス、事情を聞き知って一大決心。まさにアルケスティスの魂を連れにやって来た死神タナトスを眼にすると、うおおーッと引っつかみ、大格闘の末にとうとう撃退、アルケスティスを奪い返してしまった。
 強すぎる、強すぎるんだよ、この男は! 

 こうしてアルケスティスは生き返り、アドメトスとともに幸せに暮らしたとさ。

 画像は、レイトン「死と戦うヘラクレス」。
  フレデリック・レイトン(Frederic Leighton, 1830-1896, British)

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