ギリシャ神話あれこれ:ヘクトルとアンドロマケ(続)

 
 夫にひしと取りすがり、あなたが死ねば私には何も残らない、私とこの子のために、どうかここに残ってくれ、と涙ながらに訴えるアンドロマケ。
 が、ヘクトルは答える。トロイアの名誉のために、それはできない。トロイアの都イリオスも、父王プリアモスも、トロイアの民たちも、やがて滅び去ることだろう。だがそんなことは気がかりにはならない、お前が受けるだろう苦しみほどには。そのときには自分は死んでしまっていて、お前が苦しむのを知らずにいたいものだ。と。

 ヘクトルは我が子アステュアナクス抱こうとするが、幼な子は彼の兜を怖がって泣き、乳母にしがみつくのだった。
 その様子に、思わず笑い出すヘクトルとアンドロマケ夫妻。きらめく兜を脱いで、子を抱き上げるヘクトル。涙ぐみながら笑って見せるアンドロマケ。
 ……うーん、やっぱりヘクトルは人間がデキている。アキレウスなんかとは全然違う。

 ヘクトルは再び戦場へと向かい、アンドロマケは何度も何度も振り返りながら、館へと戻る。

 そこへ、ピューッとパリスが追いついた。お待たせ、兄さん!
 ヘクトルと、彼に尻を叩かれたパリスは、勢い込んで戦場へと戻って行く。

 To be continued...

 画像は、J.H.W.ティッシュバイン「ヘクトルとアンドロマケの別れ」。
  ヨハン・ハインリヒ・ヴィルヘルム・ティッシュバイン
   (Johann Heinrich Wilhelm Tischbein, 1751-1829, German)


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