世界に架ける橋(続)

 
 さっさと荷物を置いてしまって、町歩き。ナーエ川向こうの旧市街へ。小さな町なので歩きやすい。緑の森の丘陵に囲まれ、町自体が丘になっていて、そのてっぺんにクロップ城という古城が建っている。
 もちろん坂道を上って、最後の城を目指す。城壁のそこここにタッチしながら城内を歩いていると、小高い丘上の古城にひときわ高くそびえる城の四角の塔。
 上りたくてうずうずしながら塔への入り口を探していると、管理人らしいドイツ人が現われて、もう時間ぎりぎりだが上ってもよい、と言ってくれた。旅人ってラッキー。

 で、ヒイコラ喘ぎながら塔の階段を上る。歩き旅で随分足腰が鍛えられたけれど、塔の階段を上るのだけは相変わらず疲れる。
 この塔の螺旋階段の部分は狭いのに、塔の外形が大きいのは、塔の周囲四方に小部屋があるかららしい。途中、ところどころ小部屋への扉があったが、どれも開かなかった。
「使われてないんなら、貸して欲しいなあ。ひと月一万円くらいでさ。そしたら、ここに住むのになあ」と相棒、勝手なことをのたまう。

 塔のてっぺんに旗がはためく。ここからは四方が見渡せる。相棒に促されて、高いところには随分と上ったけれど、この城塔からの眺めが一番印象に残っている。
「お城よ、お城。さようなら。ビンゲンにこんなお城があったとはねえ」と、でこぼこの鋸壁に頬ずりする。

 鬱蒼とした木々に埋もれた、朽ちたような石の古城。こういうの、日本にもあったらいいのに、と思う。日本の城もそれはそれでよいのだが、どうも、緑が整然と刈り上げられ、天守だけがデ~ンと居座った、チョンマゲのような感がある。

 To be continued...

 画像は、ビンゲン、クロップ城塔からの眺め。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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