シャガールの青の世界(続々々)

 
 そんなこんなで散歩して、ベンチに腰掛けていると、眼の前を自転車でスイーッと通り過ぎた老人が、やおら私たちの傍らに駐輪し、ゴミ箱をあさり始めた。ペットボトルを引っ張り出し、前カゴに放り込んで、澄ました顔をして、またスイーッと去っていく。

 ヨーロッパ随一の経済国であり、環境先進国でもあるドイツ。経済は大事だが、人間にとってプラスとならなければ意味がない。その逆であっては絶対にならない。そういう方向で経済活動は最高の成果を出そうとし、競争にも勝とうとする。……アンゲラ・メルケル首相はそう明言している。
 日本は経済至上主義であるくせに、かと言って経済効率が良いわけではない。資本回転が多く、利潤率は少ない薄利多売で、一方で美徳でもあり義務でもあるとされるあくせくした労働が付随している。働いて、働いて、なのに働いた代償はあまりにちっぽけで、決して豊かにはなれず、豊かさを実感もできずに、モノだけが溢れに溢れていく。

 太陽光発電設置では、長らく世界第一位だった日本を抜いて、ドイツは群を抜いたトップの座をキープしている。太陽光パネルの設置も進み、ミュンヘンなどの大都市では、ごく普通の家々の屋根にもパネルを見ることができる。
 ……と聞いていたのだが、私たちがドイツにいたあいだ、パネルを設置した家などついぞ見かけなかった。

 同様に、ドイツではデポジット制が徹底しているとも聞いていたが、コーラ瓶やビール瓶の割れたものが捨てられているのが結構眼についた。
 それでもこの老人の自転車の前カゴには、ペットボトルが2つ、3つしか入っていなかったところを見ると、前カゴにも荷台にも回収したペットボトルの袋を小山のようにくくりつけている、日本の同様の老人に鑑みて、それだけドイツの巷にはリサイクル対象容器がなかったということなのかも知れない。

 こういうことは、実際にその土地に暮らしてみないと、よく分からないのだろう。

 To be continued...

 画像は、マインツ、大聖堂の回廊。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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