ラインの真珠

 
 リューデスハイム(Rüdesheim)は、ライン川両岸の傾斜に広がるブドウ畑の、一面の緑を期待して、相棒が行くことに決めた町。が、車窓から見えるブドウの木々は、まだ新芽をつけていなかった。
「緑、ないねえ」と、相棒は残念そう。

 向かいの席に座って眠っていた、クリント・イーストウッドのような男性が、眼を覚まして私をじっと見る。で、私もじっと見返すと、男性は自然とにっこり笑う。私もまたにっこり笑い返す。
 欧米では日本の女性は、悪い意味でモテると聞いていたが、確かに私もドイツ人男性からじっと見つめられ、満面の笑みを浮かべられることが多かった。その微笑が、他意ないものか、下心あるものかは別として。が、相棒がいたせいか、幸い口説かれたことは一度もないので、よしとしよう。
 イーストウッドに似た男性が、「チュース(=じゃあね、バイバイ)」と挨拶して降りてゆく。

 駅からのライン川沿いの道には、フランクフルトにも植わっていた、傘の骨のようなプラタナスの並木が続く。
「ここにもユダヤ人の魂の木があるねえ」と相棒が茶化す。うるさいなっ!

 この小さなワインの町は、日本でもライン・クルーズのパック・ツアーに組み込まれる、人気の観光地らしい。が、日本人の姿は一度も見なかった。
「そりゃ、新年度の4月に旅行できる日本人なんていないだろ。あー、僕辞めてよかったな」と、感慨深げな相棒。

 To be continued...

 画像は、リューデスハイム、ブレムザー城。

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