画家とモデル

 
 「オルセー美術館展」を観に三宮まで行ってきた。ついでに帰途、弟の家に寄って、赤ちゃんを触らせてもらった。

 印象派周辺のメジャー画家の絵が多く展示されるオルセー展は、毎度のことで覚悟はしていたけれど、かなりの混雑。でも、見応え十分。チェコの画家ヴィテスラフ・カレル・マチェックの絵まで来ていて、ビックリ。

 呼び物の一つは、マネの描いた「スミレの花束をつけたベルト・モリゾ」。
 マネの描いた女性像は数多いけれど、なかでもモリゾを描いたものは印象深く、そのなかでもさらに、スミレの花束のモリゾは最も忘れがたい。マネ独特の、優雅な黒の諧調を衣装にまとい、じっとこちらを見据えるモリゾ。親密な視線。
 マネらしい平坦な描き方だが、陰影がはっきりしているせいか、メリハリがある。大胆な筆遣いで、モリゾの個性的な美しさを巧みに表現している。

 以前、同じように黒衣のモリゾを描いた絵を観たことがある。全身像の、ほんの小品で、胸許のはだけた、黒い、丈の長いドレスの裾から、チラとピンクの靴先を覗かせる、意味ありげなポーズだった。タイトルは確か、「バラ色の靴」。
 「スミレの花束」と同様、「バラ色の靴」も、黒いドレスのモリゾに、わずかに色味を添える程度。ほとんど目立たない。それどころか、タイトルになければ気にもつかない。
 多分、マネが、モリゾに似つかわしいと感じたアイテム、それでモリゾを飾りたいと思ったアイテム、けれど、モリゾを差し置いて人目に立って欲しくはないアイテム、だったんだろう。

 To be continued...

 画像は、マネ「スミレの花束をつけたベルト・モリゾ」。
  エドゥアール・マネ(Edouard Manet, 1832-1883, French)

     Next
     Related Entries :
       ベルト・モリゾ
       エヴァ・ゴンザレス
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )