境界性人格障害についてのレポート(続)

 
 境界例は自己のアイデンティティが曖昧で、持続した自己イメージを持つことができない。そのため、ときどきの状況に合わせて、仮の自分を演ずる。嘘も平気で、常習的につく。気に入った人物の人格をコピーすることもある。一方で、他人の言動に左右されやすい。
 慢性的な抑鬱感(これが主要な自覚症状となる)があり、常に無力感、喪失感、空虚感、不満感といったものがくすぶっている。現実逃避として、何らかの中毒や依存症に陥ることが多い。また、いずれきっと自分が活躍できるはずだという願望を持つことで、やはり現実から逃避し、そうした願望を頼りに、甘えの感情に対して禁欲的に、分別臭く振舞おうとすることもある。
 自分の生き方が分からず、唐突に、新しい人生目標を設定して自分をリセットし、新しい人間に生まれ変われるような幻想をいだく。

 境界例の多くは、健気で寂しげで、はかなげで頼りなげな第一印象を周囲に与える。相手を信頼すると、相手に向かって自分の内面を過度に吐露し、訴える。
 その内容や態度が深刻な分、本人に自覚はなくても、結果的には相手を操作する傾向がある。自分の感情と同じ感情を、相手も持つことを欲し、受け入れてもらえないと、やはり感情を爆発させる。

 対象(人間も含めて)に対する評価が、もともと「良」と「悪」とにクリアに分裂しており、自分の持つ「悪い部分」を切り離し、その部分を他人に転嫁して執拗に攻撃する。攻撃はストレートで、自分の気が済むまで収まらない。
 自分については「良い部分」の自覚しかないことが多い。また、他人の欺瞞や偽善を見抜くのに長けている。

 総じて境界例は、自分に関わる周囲の人間(家族、友人、医療者など)を巻き込み、大いに振り回す。本人の自覚が弱い上に、その感情や行動パターンが激越であるため、周囲の人間はへとへとに疲れ、ミイラ取りがミイラとなって、鬱病などを発症することもある。
 境界例は、相手との適度な距離を保つことができず、相手に接近しようとしすぎて、自ら人間関係を破綻させ、自滅する。

 To be continued...

 画像は、A.ルーロフス「花を抱えた少女」。
  アルバート・ルーロフス(Albert Roelofs, 1877-1920, Dutch)

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