ルーツ

 
 ある日相棒が、旧東海道の某市の旅行リーフレットを持って帰ってきた。そこに載っている名所案内の一つは、私の曾々あたりの爺ちゃんの洋館だった。
 そう言えば、私の父方の祖父の、その祖父だか曽祖父だかが、この某市の、勤倹で財をなした森林持ちの豪商だったと、母に聞かされたことがあったっけ。……ちなみにこの爺ちゃんの息子、つまり父方の祖父の父だか祖父だかが、救いようのない放蕩息子で、せっかくの由緒ある家から勘当されてしまった、というおまけの話つき。

 ま、私のルーツはせいぜいこの程度だけど、アレックス・ヘイリー「ルーツ」は、黒人作家が自分の祖先をアフリカまでたどっている。
 
 西アフリカ、ガンビア海岸のジュフレ村のクンタ・キンテは、自分の太鼓を作るために木を伐っているところを、トゥボフ(白人)に捕えられる。裸で鎖に繋がれ、毛髪を剃られ、手枷足枷をはめられ、赤熱の焼き鏝を背中に押される。鞭打たれ、杖や棍棒で殴られ、汚物だらけの船倉に閉じ込められて、新大陸で競売にかけられ、トビーという新しい名前をつけられる。
 何度も脱走を企てるが失敗し、最後の逃亡中に猟犬に追われ、トゥボフに斧で足先半分を切り落とされる。

 クンタの娘キッジーが売られてから、物語はキッジーに移り、さらにその息子ジョージへと移って、こうやって最後の最後にアレックスに到る。その間、独立戦争、そして南北戦争が起こる。
 アレックスは、祖母から聞く家代々の物語を頼りにアフリカに渡り、とうとうジュフレの村へとたどり着く。

 歴史に疎い私は、奴隷貿易がアメリカ独立以前から始まっていたことを、この本を読んで初めて知った。インディアンは逃亡奴隷をかくまったという。それが、白人がインディアンを襲撃するもう一つの理由だったのだという。
 つまりアメリカって、一方でアメリカからインディアンを駆逐しながら、もう一方でアフリカから黒人を拉致していたってわけ。アメリカってホントに、つくづく、建国の最初の最初から暴力尽くめの怖ろしい国。

 To be continued...

 画像は、E.ジョンソン「自由のための疾駆、逃亡奴隷」。
  イーストマン・ジョンソン(Eastman Johnson, 1824-1906, American)

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