竹林亭白房

福丸「月並丁稚」★落語

□本日落語一席。
◆桂福丸「月並丁稚」(NHK大阪放送局『とっておき!朝から笑タイム』)。
NHK大阪ホール、令和5(2023)年12月7日収録(第441回「NHK上方落語の会」)。

使いの口上を頼まれた定吉もの忘れが激しく、そのときは尻をひねられると、思い出すと言って、大工に釘抜きでひねられてやっと思い出した。そこで、福丸が演じた落げ。

「さいぜんまで思い出さなんだのに、よう頭からしぼり出しましたな」、「いいえ、釘抜きでひねり出しました」。

実のところ、本来の落げ(に至る展開)は以下のようなものである。

丁稚の定吉が旦那に使いを頼まれて、十一屋へ口上を伝えるように言われたのは、「当月二十八日には、月並の釜を掛けます」ということだった。
しかし、定吉がすったもんだのあげく、ようやく思い出したのは「当月二十八日には、月夜に釜抜きます」という言い間違いの口上だった。

そこで十一屋の旦那が言ったのは「当月二十八日には、月夜に釜抜く?……当月二十八日は、闇も闇も、まことの闇じゃ」と。で、定吉が「ほな、うちの旦さんの言うたんは鉄砲か知らん」と言って落げである。

これは、現代人(大阪人)にはまずわからない落げだろう。江戸時代にできた「上方いろは歌留多」というものがあって、その「つ」が「月夜に釜抜く」。これは、「明るい月夜に、釜のような大きなもが盗まれることがある」から、「ゆだんして物を盗まれる」ことを言ったもの。
また、「や」が「闇に鉄砲」。これは、「闇夜に鉄砲を撃っても当らない」から、「やっても意味がない」ことを言ったもの。

また、さらに、本来の落げを理解するには、旧暦が通用していた時代は、月の二十八日は晦日前で闇夜だったという知識も必要である。

この落げは三代目桂春團治までは演っていたが、もうその後は封印だろう。ちなみに、『増補 落語事典』によると、三代目春團治は、本来の落げがわかりにくいので「うちの旦那は闇夜が嫌いでございます」と言って落げていたこともあるらしい。
自分は聞いたことがないが、これにしたところで、現代人(大阪人)にはやはりむりだろう。
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