夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

進行形

2016-05-17 23:55:09 | 雑談

今日の放課後、私が担任しているクラスの教室を覗くと、授業が終わったばかりなのにもうスマホでゲームに夢中になっている者が何人もいるので、彼らの背後から、
「そんなにゲームばっかりやってると、ゲーム廃人になっちゃうよ。」
と嫌味な声でささやきかけていたら、ある学生から、
「先生、その忠告ムダですよ。」
と言われた。
「…あ、そうか。未来形じゃなくてすでに完了形の事態なわけだな。」
「はい。」
「認めるな、こら。…ていうか、すでに廃人化していて現在もなお進行中だから、現在完了進行形か。」
と言ったら、他の学生たちが聞いて笑っていた。

すみいろ

2016-05-15 21:44:25 | 日記
岡山市の林原美術館に、企画展「すみいろ――古筆・宸翰(しんかん)・大名の書――」を観に行ってきた。
藤原定家の日記『明月記』原本の新出断簡や、伝冷泉為相筆『古今和歌集』や現存が確認されていない『後嵯峨院御集』の断簡など、初公開の重要資料ばかりで、見ていてワクワクしどおしだった。


岡山藩の初代藩主・池田光政自筆の『風葉和歌集』抜書は、3月に山陰地域の研究者の会合で発表があったものの現物なので、特に興味深く見た。

この企画展は先月12日から始まっていたが、今までずっと都合がつかず、会期が終了する今日になってようやく観に行くことができた。
主催者側の挨拶文に、
「すみいろ」があらわすのは王朝の雅(みやび)や歴史だけでなく、それが書かれた時代や、書いた人のこころや美意識です。本展を通して、書が持つ様々な魅力を感じていただければ幸いです。

とあったように、名筆家や天皇・大名の書の見事さに魅了され、また尽きぬ興味を刺激されて帰って来た。

女の物語

2016-05-14 22:16:52 | 日記

今日は、月に1度の源氏物語講座の日。
毎回、『源氏物語』を一巻ずつ進み、和歌を含む場面を取り上げて、受講者とともに読み味わう。

前回は作者と作品についてのガイダンスで、本格的な講座は今回が初めてなので、ものすごく緊張した。
幸い、受講者の方々がみな熱心で、どんどん質問したり意見を言ってくださったりするので、不慣れな私としてはとても助かった。

今回取り上げたのは、桐壺更衣が亡くなる直前に詠んだ、
  限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり
という和歌を含む一場面。

帝からの寵愛を一身に集めて他の妻たちの嫉妬を買い、いじめ抜かれて病に陥った桐壺更衣が、死を前に苦しい息の下からようやく心中を訴えた歌である。
受講者の方は皆さん女性なので、桐壺更衣がこの歌に託した思いがどんなものだったか、色々と意見や感想を聞かせてくださったので嬉しかった。

自分の体験や知見を重ね、物語の世界に転移するように共感し、語っている様子を見ると、『源氏物語』はやはり女性の物語、女性のための物語なのだなあということを強く感じた。

風吹き荒れる

2016-05-03 23:29:59 | 日記
今日は、職場の仲間と大山に遊びに行こうと計画していた日。
しかし、朝から激しい風が吹き、時折電線がびゅうびゅうとうなり声をあげている。

臆病者の私は、(たぶん誰も大山に行こうとは言うまい。)と思い込んで集合場所に出かけた。
いちおう、前日に、「雨が降った場合は美術館に行きましょう。」と伝えてある。

ところが、全員集まってみると、誰も大山行きを中止にしようとは言わない。
みんな、すごく楽しみにしていたらしい。
私も覚悟を決めて車を運転することにした。

大山寺駐車場に着いても、停まっている車はわずかしかない。
3日前は、同じ時間には満車になっていたのに。
おそらく荒天との予報を見て、登山客もハイキング客も予定を変更したのであろう。

私たちは、平日よりなお人の少ない中を、大山寺に参り、大神山神社奥宮まで歩いた。
風が吹き荒れ、山全体がごうごうと轟き、頭上から木の葉やら新緑の芽やら土埃やら、色々なものが降ってくる。
山中の道に所々、折れたばかりの生木の枝が転がっている。
木々の間から、大山の嶺の辺りに、ものすごい速さで雲が流れて行くのが見える。

顔を上げられず、足元を見ながら歩くのが精いっぱいの状態で1時間ほどハイキングしたが、みんな悲鳴をあげたりしつつ楽しんでいるようだった。


やや雨が強く降ってきたので、それ以上の行軍は断念して駐車場に戻り、ビアレストランで食事した後、とっとり花回廊に行った。
ここでも強風に見舞われつつ、美しい花々を眺めて癒やされてきた。

今日は自然の猛威を身近に感じた一日だった。
また同じメンバーで、今度は紅葉の頃に頂上まで登ろうと言って帰って来た。