夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

SKT38 (その2)

2013-07-06 22:58:11 | 教育
ようやく、表題の話。
先日の古文の授業で、敬語の文法学習を行った。
文章の読解ではそれなりについてくる生徒たちが、文法中心の授業になると、とたんに反応が鈍くなった。
何も言わなくても、表情や態度で、
(興味ない。)(イヤだ。)(やりたくない。)
と思っているのがありありとわかる。(昔読んだ、春山茂雄の『脳内革命』という本に、「感情は物質として存在する。」ということが書いてあったが、まさにその通りだ。)

…と、そのとき、授業で使っていた河合塾の『古典文法トレーニング』に、尊敬語・謙譲語・丁寧語がそれぞれ、S・K・Tと略記されているのを、それと説明したあとで、
「SKE48じゃないよ。」
と駄洒落を飛ばして、ハッと気づいた。

「君ら、敬語も、AKB48とかSKE48だと思って覚えればいいんだよ。
尊敬語は、チームSに所属しているメンバーで、動作の主体を敬う働きがある。
謙譲語は、チームK。動作を受ける相手を敬うヤツら。
丁寧語は、チームTでメンバーは2人だけ。(「侍(はべ)り」と「候(さぶら)ふ」)。彼らは、動作とは無関係に、話し手から聞き手、あるいは書き手から読み手への敬意を表現する。」

こじつけにもほどがあるのは承知の上で、さらに続ける。

「君らは、AKB48なら、だいたいのメンバーの顔と名前とプロフィールは覚えているだろう?同じように、敬語もひとつひとつの語に個性があるから、辞書や文法書で、それぞれの語の語源と意味と使われ方をチェックして、覚えてあげよう。」
「それに、こっちの方がずっと数が少ない。前も言ったけど、敬語は全部で38くらいしかないから、決して覚えられない数ではない。」

古典文法で覚えなければならない敬語の数は38くらい、というのは私の持論で、文法書によって数は違うが、だいたい40語前後が、高校で習う敬語の範囲である。40とするより、38とした方がなんだか少なく見えるので(スーパーの98円商法と同じ)、生徒には昔から、
「敬語で覚えなきゃいけないのは38くらいしかないから、その気になればすぐ覚えられるよ。」
と言い続けてきたのだ。

「…で、このSKT38なんだけど、中にはグループを掛け持ちしているメンバーもいるんだ。例えば、『奉(たてまつ)る』は本来「与ふ」の謙譲語で「差し上げる」という意味なんだけど、「乗る」や「着る」「飲む・食ふ」などの尊敬語としての用法もある。

これは、大島優子がチームKのメンバーであると同時にNot yetのメンバーでもあるのと似たようなものだ。大島優子本人には何の変わりもないけれど、AKBの時はその楽曲を歌うし、Not yetの時はそのメンバーとして振る舞う。
『奉る』も、身分の低い者が、貴い人に“差し上げる、奉仕する”という言葉の本来の意味は変わらないが、貴い人に飲食や着衣の奉仕をすることを『奉る』と表現した場合、これを貴い人の側から見ると、自ら「(飲食物を)お召し上がりになる」、「(お着物を)お召しになる」と、尊敬の意味で扱われることになる。…わかってもらえたかな?」

こじつけもいいところなのは百も承知だし、このたとえでは本動詞/補助動詞をうまく説明できない。
ただ、教師というのが現場で必死に、無い知恵を絞って教えていたり、教義をわかりやすく教えようとして教義を曲げる危険と隣り合う「嘘も方便」のようなところでなんとかやっている場合もある事情を酌み取っていただければ…。

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3 コメント

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作戦 (風の靴)
2013-07-07 09:01:01
おはようございます。

ちかさださんが現場を通して、実際に生徒さんと向き合った中で感じられた事、そして経験を踏まえた上での持論を興味深く拝読させて頂きました。

おっしゃるように、受ける側が・・・物事「面白くないな~」「嫌だな~つまんないな」「やりたくない」等と思えば悲しいかな人間は何事も入って来ないものです。(笑)

受け入れる側の態勢がないと難しいですよね

兎に角・・・そこに一つでも何か魅かれる部分があったり、ハッとしたり、単純に「もっと知りたいっ!」と思えば自然に人間は耳を傾けてしまうものです。(笑)

好きな事や、興味のある物事というのは、ほっといてももう~嫌でも入ってきますからね(笑)

「その情熱」を学問に傾けたなら、かなりのモノになるのでは?(おそらくは優秀な成績を残せるであろう)

と・・・思わせる、或いは・・・思われる方々は多いのではないでしょうか?(苦笑)

どうしても・・・

××は○○であるべきだとか、××は○○で無ければならない、と言った固定観念や形式に、教える側も学ぶ側も、捉われているとなかなかスムースには入って行かない?来ない?ものです。

枠組みや理論に拘らず、入り口がどんな形であれ・・・
入ったモン、入れたモン勝ちであります。(笑)

ですから・・・ご自分の体験や、普段の生活の中で生徒さんを心得ているちかさださんの(笑)

生徒さんの心理を巧みに使ったこの手法、試みは大変面白いと感じます。う~ん結果が楽しみですね(笑)

「果報は寝て待て」・・・

いい予感が致します・・・(笑)
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風の靴さんへ (ちかさだ)
2013-07-08 00:18:56
コメントありがとうございます。
文中にありますように、「手法」どころか、こじつけもはなはだしく、大学時代に国語学を教えていただいた先生からは怒られそうなたとえなのですが…。
テストは、先ほどまで採点しておりましたが、彼らにしてはよくできていたと思います。
授業の内容を確認するレベルの問題は出来ていたのですが、模試レベルの問題の方はまだまだでした。
私も生徒も、いっそうがんばら(せ)ねば。

ありがとうございました。
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ちかさだ様 (風の靴)
2013-07-08 12:17:34
こんにちは!

先ずは手応えを感じられた様ですね(笑)

やっぱり生徒さんに変化がお有りだったのですね

ちかさだ先先が、今後の作戦にどう出るかが
楽しみです(笑)

きっとこれが生徒さんのやがて「実」となり良い結果に結びつくと思います。(笑)期待したいですね

今、外は雨が降ってきました・・・今年は梅雨明けが早い・・・(恵みの雨です・・・笑)

もう~7月に入ってからは暑さが厳しくて、特に最近では急激な気温の上昇で、連日猛暑が続いておりますが、ちかさださん御身体の方は大丈夫でいらっしゃいますか?

ちかさださん、どうぞくれぐれも御自愛下さいね。
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