夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

百年の時計(その1)

2013-07-07 23:16:20 | 映画

先日、出張で訪れた香川・高松が舞台の映画というので大いに期待して観に行った。
主演の木南晴夏(きなみはるか)は、『君が踊る、夏』(2010)での演技がとてもよかった印象がある。

「百年の時計」をめぐって、初老の現代美術家と若い女性学芸員とが時間と記憶の旅をする物語。

内容の紹介
神高涼香(かみたかすずか=木南晴夏)は、高松市美術館に勤める学芸員。毎日、恋人の建治が運転する「ことでん」で通勤している。
涼香は今、ある企画展の担当を初めて任され、意気込んで取り組んでいる。
郷土の誇る現代アートの大家、安藤行人(あんどうこうじん=ミッキー・カーチス)を口説き落とし、その回顧展を開いてもらう約束を取り付けたのだ。
涼香はNY留学中に、切り絵作家の母を亡くし、当時多忙で家庭を顧みなかった父親とは、そのときからしっくりいっていない。


涼香が安藤の個展を手がけたいと思ったきっかけは、六年前に東京で、安藤のインスタレーション(空間芸術)に出会ったからだった。教会を使ったインスタレーションで、最後に安藤は二階から紙吹雪を撒いた。そのとき涼香は、母親の面影が一瞬、眼前に浮かんだ。…当時、涼香は母親の病気を知らずに留学に行き、アートに夢中で母親の死に目に会えなかった自分を責めていた頃だったが、それが許されたような気がした。
時間を越えて自分の記憶と向かい合う体験をした彼女は、「時間と記憶」をテーマに活動してきながら、近年は低迷し、すでに過去の作家とみなされている安藤に、新作発表の場を用意したいと願っていた。


しかし、涼香が実際に会ってみると、安藤は創作意欲を失った、ただのわがままな老アーティストだった。空港での待ち合わせをすっぽかし、居酒屋で地元の劇団員たちと意気投合して、商店街をチンドン屋のように練り歩き、初対面での印象は最悪。しかも、制作のためのアトリエを用意させておきながら、いきなり回顧展を中止すると言い出す始末。
涼香と言い合いになった後で、安藤はぽつりと、
「…作れないんだよ。」
と漏らす。涼香が、
「先生にはまだ、伝えたいことがあるんじゃないですか?」
と尋ねると、安藤は、懐中時計を見せ、
「君に頼みたいことがある。」
安藤の代表作の『時計』は、時計を手にした、顔のない女性の像だが、それにはモデルがいるのだという。安藤の若き日、電車で見知らぬ女性からこの時計を差し出され、魔法にかけられたように一度だけの作品が生まれたのだという。
「この時計をくれた女性と再会したい。また魔法をかけてもらえるかもしれない。」
持ち主の女性と会えたら、新しい作品を生み出せるかもしれないという安藤に、涼香は戸惑いながらも、彼女の行方を一緒に探すことを約束する。

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