夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「京へのいざない」展

2014-11-08 22:03:46 | 日記
「国宝 鳥獣戯画と高山寺」展を観終えると、すでに午後1時を過ぎていた。
開門前の9時から並んで、館内に入るまでに2時間、展示品を観ている間に2時間以上も経ったことになる。
さすがにくたびれたので、噴水広場のそばで、しばし休息。昨日まで雨が降っていたのに、今日は青空が広がった。
もし昨日来ていたら、雨の降る中、館外で震えながら入場を待つ行列に並んでいたのだろうな、と思うと、幸運を実感した。


その後、平成知新館で開催中の「京へのいざない」展を観た。
これは、京博の常設展示館が5年ぶりにリニューアルし、9月に平成知新館としてオープンしたのを記念して、京文化の精髄を紹介する催しとして企画された展覧会である。
国宝40点、重要文化財110点を含む、絵画・書籍・彫刻・工藝など400点余りが展示されているというので、行く前から非常に楽しみにしていた。

私としては、どうしても和歌関係の古筆が気になり、ずっと1階の「書跡」のフロアにばかり居続けてしまった。
国宝 書巻〈本能寺切〉 藤原行成筆
重要文化財 古今和歌集巻第十七断簡 伝小野道風筆
重要美術品 古今和歌集巻第十八断簡〈本阿弥切〉
重要美術品 貫之集巻下断簡〈石山切〉 藤原定信筆
など、目も眩むほどの豪華な品ばかりで、短時間見るだけで終わってしまうのが本当に残念だった。(「京へのいざない」展は図録を作成する予定はないとのこと。)

国宝「芦手絵和漢朗詠抄」(藤原伊行筆)は、今の季節に合わせて巻上の秋の部分が広げられていた。
間もなく暦の上では秋が終わるため、「九月尽」題の、
  山さびし秋もくれぬとつぐるかも槙の葉ごとにおける初霜
や、「紅葉」題の、
  白露も時雨もいたくもる山は下葉のこらず色づきにけり
の歌などが特に印象に残った。

同じ階には、「絵巻」のフロアもあり、ここにも長くいた。
国宝の「粉河寺縁起」や「法然上人絵伝」など、有名だが今まで写真版などでしか見たことのない作品を実見できたのが嬉しく、人混みにもめげずじっと見入ってしまった。