夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

N・ヒル『仕事の流儀』(その5)

2012-10-19 22:01:10 | N・ヒル『仕事の流儀』
The act of selling, if scientifically conducted, may be compared to an artist at his easel. Stroke by stroke, as the artist develops form and harmony and blends the colors on a canvas, the Master Salesman paints a word picture of the thing he is offering for sale. The canvas on which he paints is the imagination of the prospective buyer. He first roughly outlines the picture he wants to paint, later filling in the details, using ideas for paint. In the center of the picture, at the focal point, he draws a clearly defined outline of motive! As a painting on a canvas must be based upon a motive or theme, so must a successful sale.
(“How to sell your way through life”‘3 The strategy of Master Salesmanship’)

第3章では、人に物を売り込む行動を、画家が絵を描くことになぞらえているのが印象に残った。

画家が一筆ごとに、キャンバス上に形と調和を展開させ、色を混ぜ合わせていくように、セールスの達人は、自分が売り込もうとするものについての「言葉の絵」を描くのだという。彼は、見込み客の「想像力」をキャンバスにして、まずラフに自分の描きたい絵の輪郭を描き、あとからアイデアを使いながら細かい部分を埋めていく。絵の真ん中の、中心点には、はっきりと定義された「動機」の輪郭を描く。しっかりとした「動機」と主題に基づいた絵と同じようなら、セールスはうまくいくにちがいない。

それに対して、無能なセールスマンは、あわただしく自分の売り込みたいものについての粗雑な輪郭をスケッチし、絵から「動機」が置き去りになっているのだという。だから、見込み客も、そのセールスマンの心の中に隠れてしまったもの(=動機)を見ることができず、彼の荒っぽい、あるいは未完成な、生気のない絵に心を動かされることはない。ヒル博士が、「願望」という種が心の中にまかれなければ、「動機」に対する訴えかけにならないと結論づけているのは、今の自分にグサッときた。

今の自分が、授業をするにしても、論文を書くにしても、自分の訴えたいものがあり、動機や主題を明確にして、受け取る側の役に立ってほしいという願望をこめて、想像力やアイデアをフルに使ってやっているだろうか?仏作って魂入れず、のようなことになっていないだろうか?

今日は書きながら自分を省みて、できていないことばかりなのが身にしみてわかった。職業人は、常に原点を忘れず、情熱をかき立ててやっていくことが大切だ。