夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「オレンジと太陽」(その1)

2012-10-04 23:36:08 | 映画
映画の冒頭、イギリス・ノッティンガムの街。警官たちがアパートのドアをノックし、中に入る。婦人警官が若い女性に赤ん坊を引き渡すよう要求して、
「赤ちゃんを安全な所に移動させるだけだから。赤ちゃんを下に置いて。明日会わせてあげる。心配いらないわ。」
「連れていかないで。」

イギリスでは、1896年から1970年代にかけて、親の離婚や貧困家庭、親の麻薬中毒・アルコール依存症などを理由に、親から子が引き離された後、秘かにオーストラリアやニュージーランドの施設に送られていた。その子供の数は、13万人にも及ぶそうだ。

背景には、児童福祉予算の削減を目指したイギリス政府と、積極的に白人移民の受け入れをしたオーストラリアやニュージーランド、カナダなどの思惑が一致したことがあるという。

映画では、移民した先のオーストラリアの児童養護施設で、子供たちが虐待を受けたり、強制労働させられたりしたことが、大人になった彼らの口から語られることになる。

1986年。イギリスの社会福祉士、マーガレット・ハンフリーズは、シャーロットという女性から親探しの依頼を受けたのがきっかけで、この「児童移民」の真実を知ることになる。