夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

林原美術館

2020-08-22 23:45:57 | 日記
先日、私が所属している研究会の方から、企画展についてのお知らせがあったので、岡山の林原美術館に見に行った。
企画展の名が「夢も 出世も あだ討も 絵が紡ぐオムニバスストーリー 飛び込め! お話の世界」で、正直、長すぎると思った。
展示・企画の内容自体はとても良かった。

特に、高校の国語の教科書によく採られ、古典の授業で生徒が教わる機会も多い作品、場面について、
  ・陶淵明「桃花源記」 → 武陵桃源図巻
  ・鴻門の会、項羽と虞美人との別れ → 秦漢物語図屏風
  ・源義仲の死、平忠度が都落ち前に藤原俊成に和歌一巻を託す → 平家物語絵巻
  ・在原業平の東下り → 東下り図屏風
というように、その場面を描いた絵を絵巻や屏風で示し、わかりやすい解説を施しているところに工夫を感じた。

今回初公開の作品も多く、展示の内容の充実ぶりを考えると、入館料(一般500円)は非常に安い。
高校生は300円で入れるので、授業で学習した知識を深めるためにも、ぜひ訪れて鑑賞してもらいたいと思った。


一つ欲を言えば、今回の企画展の図録がほしかった。
展示作品の写真とその解説だけ、パンフレットのような体裁でもよいので、冊子化していただけるとありがたいと思った。

堕落

2020-08-21 23:21:33 | 日記
昨日、十年来使っていたガステーブルの火がつかなくなる(電池を交換してもつかない)という事態が生じて初めて気付いたのだが、私は他に加熱して調理することのできる器具がない。
そこで長年のポリシーを曲げ、ついに電子レンジを買うことにした。

私はこの横着に見える調理機器が嫌いで、学生時代に一人暮らしを初めてこの方、一度も使いたいと思ったことがない。若い頃に、電磁波を当てた食品は人体に有害という俗説を聞いたせいもある。

冷凍肉などの解凍は、冷蔵庫で時間をかけてゆっくりと、冷凍ご飯を温めるのは蒸し鍋でじっくりと、という自然な行き方がよいと信じ、それを実行してきたが、自ら振り返ると、忙しい時はコンビニエンスストアで弁当やパスタを買って、お店で温めてもらっていたのだから、そこまで徹底したポリシーというわけでもなかった。

むしろ電子レンジを買って、暇のある時に作り置きした料理をレンチンして食べるほうが健康にはよいであろう。

というわけで今日、家電量販店に行き、新しいガステーブルと電子レンジを買ってきた。
若い頃には堕落と思い、頑なに所有することを拒んでいたが、今は変なこだわりより実質を尊ぶようになっているので、まったく抵抗感はなかった。
これも年の功なのかもしれない。

たやすみなさい

2020-08-20 23:53:58 | 短歌
今年も毎回、近代短歌の授業で実施している「穴埋め短歌」、今回は岡野大嗣の歌集『たやすみなさい』(書肆侃侃房)からの出題。

アイスだけ 買うつもりだった スーパーの 帰りに■■■■■■■■■■
元の歌「猫にやるかつおぶし」 

学生の解答 (カッコ内は私のコメント)
・「たこ焼きの誘惑に負ける」(スーパーの店先に屋台が出てるとつい…。)
・「あらら衝動買いを」(「あらら」、という感動詞のはまり方が絶妙。)
・「見かけた僕の元カノ」(私は以前、このシチュエーションを経験したことがある。)
・「寄った懐かしい母校」(そして、昔の懐かしい思い出に浸りに母校に立ち寄った。)

好きだった 曲を好きなまま 歳とって ■■■■■■■ ■■■■■■■
元の歌「おんなじ歌詞に なんどでも泣く」 

学生の解答
・「同期に言われた 中学生か」(尾崎豊を聴いていたと見た。)
・「記憶の中も 今も独り身」(サザンの「Ya Ya(あの時代 (とき)を忘れない)」を聴いていたと見た。)
・「気付けばその歌 懐メロだった」(中身は変わらないまま、歳だけとっていることを思い知らされる。)
・「時代遅れと 娘に言われる」(かつて一世を風靡したTKサウンドも今や…。)
・「歌い出したが 歌詞が出て来ず」(老化現象。)
・「聴く度想う 初恋の人」(村下孝蔵「初恋」を聴く度、私もそんな感じになる。)
・「更新されない カラオケの十八番」(逆にこれが正解。無理に若者の歌を歌おうとするおっさんはカッコ悪い。)

赤ちゃんが マスクの僕を じっと見る ■■■■■■■ ■■■■■■■
元の歌「できるだけ目で 笑ってあげる」 

学生の解答
・「隠れてるけど 笑顔を作る」(元の歌と同じような発想です。)
・「目だけでいない いないばぁした」(句またがりの使い方がうまい。)
・「澄んだ瞳に 吸い込まれそう」(お願いだ、そんな無垢な目で見つめないでくれ。汚れっちまったオレを。)
・「僕がパパなんだ 信じてくれよ」(むっちゃ警戒されとる。(笑))

感想 
岡野大嗣(おかの・だいじ)は1980年生まれ、大阪府豊中市在住の歌人で、主にインターネット上で活動しているそうである。
歌集のタイトル「たやすみなさい」は作者の造語で、
  たやすみ、は自分のためのおやすみで「たやすく眠れますように」の意
という歌が、本の最初に出てくる。
私も、眠られぬ夜を過ごすことはあるので、この祈るような気分はとてもよく分かる。

岡野さんの歌は、「この気持ち、この状況、わかる…。」といちいち共感できることばかりで、学生たちにもきっとすんなり受け入れられると思っていた。
彼らの解答を見ながら、私以上に岡野ワールドで想像の羽を広げて楽しんでいる姿が伝わり、嬉しくなった。

夏の思い出

2020-08-19 23:57:57 | 日記
私の勤務校は今年は夏休みが短く、実質あと半月ほどしかない。
例年なら私の夏休みは、資料調査での出張や、美術館見学、文学作品の舞台となった土地を訪れる旅行などを計画に入れるけれども、今年はそれらがほとんどできそうにない。

そんな中でも、この夏の思い出になるだろう出来事は、先日ハロコンに行ったことだ。

コロナ禍で今、ほとんどのアイドルやアーティストのコンサートは自粛かインターネット配信になっているが、ハロープロジェクトは感染予防対策を徹底し、1.000人規模の観客でのコンサートを実現している。
観客は座席の位置により、会場へは時間指定で3回に分けて入場し、座席は必ず1つずつ間隔を空けて座り、マスク着用で声援はなし、静かに歌唱を聞くという、通常のハロコンとは全く違う趣だが、とても良かった。

今回は各メンバーはハロプロの楽曲ではなく、昭和歌謡から最近のJ-POPまでのバラード曲をそれぞれ一人で歌っていたが、ふだんはグループで歌っている彼女たちのソロ歌唱を聴くのは新鮮で、各人の個性がはっきり伝わってくるのが興味深かった。

小田さくらさんの歌う「もののけ姫」の主題歌には異世界に誘われる思いがし、彼女の歌にずっと惹かれ続けてきた自分の感覚が間違っていなかったことを証明してもらったように思った。

私は小田さくらさんがきっかけで、今のモーニング娘。に興味を持つようになり、それが波及してハロプロのグループ全てが好きになってしまったので、今回のハロコンは全メンバーを3チームに分けたA・B・Cの公演を3つとも見た。

どのメンバーも良かったが、特に印象に残ったのは(以下敬称略)、伊勢鈴蘭「三日月」、金澤朋子「Jupiter」、島倉りか「スローモーション」、段原瑠々「見上げてごらん夜の星を」、井上玲音「糸」、浅倉樹々「カブトムシ」、竹内朱莉「雪の華」などで、段原さんの歌は聴いていて思わず涙がこぼれてきてしまった。

今回、歌を聴いたメンバーの中には、すでに卒業を発表している人もいるので、もしかするとこれが生歌を聴く最後の機会になるかもしれない。
その意味でも、このコンサートは忘れがたい夏の思い出になりそうだ。

秋の訪れ

2020-08-18 23:51:40 | 日記
今年は七月末まで梅雨が長引き、短い夏で終わるかと思っていたら、八月は「危険な暑さ」と形容される猛暑日続きで、正直驚いている。
昨日などは、夕方の五時頃になっても、外は40℃近く、この暑さがいつまで続くのだろうと思った。

今日はこれまでよりやや過ごしやすく、夜になると涼しく感じられ、今は窓の外から盛んに虫たちの鳴き声が聞こえる。
暦の上ではすでに秋だが、兼好法師が言うように、季節は常に次の季節を内包しつつ移ろいゆくことを感じる。

人の世にも時勢の推移というのがあって、特に指導者の地位にある者は、世上の小さな変化を見落とさないように気を配りながら、先々のことを考えて判断・行動しなければいけないと、この頃しきりに思う。
非常時には、平時には問題にならなかった指導者の能力や個人的資質が、その組織や集団の成員の禍福に大きな影響を与える。
そのことを忘れてはならないと思う。