市フィルの定期演奏会まで残り一ヶ月に迫ってきた。
そんな中でレッスンがあったので、だめもとで師匠に頼んでみた。
「先生、今日はどうしてもできない所があるんで止血の緊急手術をお願いできませんか・・・」
「というと、どこですか」
とおっしゃっていただいたので、とりあえずブラームスの楽譜を広げてみた
「あの~、跳躍するところなんですが・・・」
といいながら出来ないところを探してはみたものの、あっちもこっちも難しいので迷っていると
「まず冒頭はどう弾いているんですか・・・」と師匠は一楽章の冒頭から弾いてみせてくれた。
「お~そこは1で取るんですか!」
「なるほど、そんな風に取るんですね!」
「そこは4-4と移動させるのか!」
どんどん演奏してくれ、楽譜と師匠の左指の動きを見逃すまいと凝視し続けた。
師匠が弾くと、力強い響きがどんどん生み出されてくる。
「いいですね~」
「そんな取り方もあるんですか!」
てな具合で、チェロ演奏のバリエーションの豊かさ、奥深さがどんどん広がってゆく。
こちらが目をきょろきょろさせて、演奏に追いつかない風だと、鉛筆で指番号を書き入れてくれた。
結局ブラ1の主要部分の殆どを、1楽章から4楽章の終盤まで弾いて、
どうやって取っているのかを全て見せていただいた。
ここまで示してくれて分かったのは、僕はができていないのは一部分などではなく、
殆ど全ての部分で修正が必要だということだった。
ブラームスを教えてもらったあと、師匠もドンファンについてもアドバイスをくれようとしたのだけど
どうやらラチがあかないと感じられたのか、沢山ある楽譜棚からある冊子を取り出して見せてくれた。
<お借りしたシュトラウスだけの参考書表紙>
みせてもらったのは、使い込まれて、年季の入ったピンクの表紙の冊子だった。
後で分かったのだけど、それは1910年初版の、オーケストラ演奏者向けに編集された楽譜で、
リヒャルト・シュトラウス曲目に絞って、演奏が難しいフレーズの演奏方法を解説した参考書だった。
著者は、当時のウィーンフィルの主席奏者や音楽院の教授たちだ。(外国語なので半分誤読かも)
師匠も、僕でも演奏できそうな部分についてはその場で演奏方法を教えてくれたのだけど、
「ドンファンはプロでも弾けないくらいだけら、どうせ無理だと思うけど、参考にしてください」と
ご自分が若かりしころに使った参考書を、探し出してくれたのだった。
こんな貴重な教科書をお貸しいただいた師匠に心からお礼を申し上げたい。本当にありがたかった。
その中を見てみると、我がオケの主席から教えてもらった運指とかなりの部分で重なっていたけど
微妙に異なる部分もあった。自分で取りやすい、可能性の高い方を選ぼうと思う。
さて、師匠の教え、先日の植草さんの弦トレ、そしてこの参考書を貫いているのは「合理性」だと感じた。
出来る限り指の移動を抑え、移弦による音の途切れを避けるような運指が選ばれていると感じた。
気付いたことの一つは、フラジオで取れる部分は、状況によって積極的に使うことも大事だということ。
例えば、ドンファンの282小節などでは、ゆっくりなので、僕も弾けるんだけど案外音の取り方が難しい。
そこについては下記のような指示が書き込まれていた。
指番号でいうと3の頭に○が打ってあるのがフラジオレットなんだけど、プロの演奏者も本番で3弦の高いGは
フラジオを使っているのだそうだ。特にこの場合ミュートもついているので全く問題ないのだとのこと。
師匠によるありがたい「特別緊急処置レッスン」のあとは、基本のレッスンにもどり、
しっかりとやっていただいたお陰で貴重な気付き・発見がいろいろあった。
その基本はしっかりと体に刻みつけ、これから一月は、演奏会に向け極力「エアー」を少なくできるよう練習しようと思う。