千恵子@詠む...................

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あるんだあ痴漢外来 認知療法きくかもね

2021年10月26日 | 

救援連絡センター発行「救援」紙の、2面の連載コラムより

あるんだあ痴漢外来     認知療法きくかもね

「痴漢外来」って、ご存知か。聞き慣れない言葉だ。そもそも痴漢って病気なのか。犯罪じゃないのか、それも弱いものに向かう卑劣な罪。そんなものが病院で治るものなのか。そんな疑問が浮かぶことだろう。

本書を読んで驚いた。平日の夜にスーツ姿で集まる男たち、大学の授業を終えた学生、自営業者などなど。机がロの字型に並べられた部屋に入り、それぞれが思い思いの席につく。十人ばかりが机を囲んでいるさまは、何か会議をやっているよう。いわゆる普通のひとたちが、患者さんたちなんだ。初対面の人びとがセッションを始める。週一回、六ヶ月。ワークブックに沿って集団療法が行われる。

十年間で五百人を治療した痴漢外来の実践。はるばる関西や中部、東北や北海道から毎週通ってくる人もいる。通えない人は近くにアパートやウイークリーマンションを借りたり、親戚の家に間借りしたりして、一時的に生活の拠点を移して治療に専念している。そんなに切実なんだ。

ほとんどは「やめたい、やめなければならない」と思いながらも、自分ではどうすることもできず、何度も逮捕されたり、はては受刑したりという経験を持っているそうだ。

痴漢、盗写、下着窃盗などの多くが依存症なんだ。刑罰の限界を感じるよね。

著者は専門が臨床心理学。東京拘置所の矯正官、国連薬物犯罪事務所エキスパートなどを経て、現在は筑波大学教授。

依存症の原因と診断。認知行動療法。ハイリスク性犯罪者への対処。現状と未来への示唆に富んでいる。

また強迫的性行動症の実例は、身につまされる。プライバシー配慮のためユカリさん仮名は、六歳のときに実父から強姦される。度重なるたびに快感を覚えてしまった。思春期以降に愛のない性交、さらには高校生のときには女のクラスメートの半数と性交渉を持っていたと。罪悪感を抱くたびに、それを紛らわせようと、さらに性行動に耽溺していった過去。

ツヨシさんのドラッグとセックス、HIV感染、覚醒剤と逮捕。釈放されてから二年が経っても繰り返しそうな自分がいる。でも仲間がいる。

性的依存症という病気。刑罰だけじゃなくて治療も必要と。三割なおるんだ。

また性犯罪被害者の分析。ほとんどの被害者は泣き寝入りをしている。さらに、理不尽な判決と裁判官の無理解。今後の被害者支援のありかたへの提言。

★「痴漢外来  性犯罪と闘う科学」  原田隆之 ちくま新書

 

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