真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

庶務省総務局KISS室 政策白書 はやせ こう 2021/02

2024-06-01 | 読書-エッセイ/小説etc

庶務省総務局KISS室 政策白書-ハヤカワ・オンライン


著 はやせ こう
ISBN 9784150314712
カオスなふたりのショートショート15篇
庶務省総務局、経済インテグレート・サステナブル・ソリューション室...

ハヤカワ・オンライン

 

もう愉快千万なので、「〇〇ほか」は許さないっ!

01 潜水型流氷カニ運搬計画
02 残業パラダイムシフト
03 国際原子時(T A I)連動景気対策
04 マリー・アントワネット撲滅計画
05 СЮリニア輸送計画
06 日本英語における島崎式発音法
07 閣僚・議員の心拍数連動型アラーム
08 二〇二六年問題対策
09 島崎由香の節税クッキング
10 一九八五年の米騒動
11 森羅万象一択式 共通テスト
12 パールバスケット曳航計画
13 特殊詐欺被害 実態調査
14 リサイクル胡蝶蘭
15 純和風 I R

「中村君さぁ・・・・・、」で始まらないのは、
11 森羅万象一択式 共通テスト
のみが、前章からの話の流れで、「中村君、分かった?」と始まる。
他はすべて、「中村君さぁ・・・・・、北極大陸と南極大陸なら、どっちが好き?」「中村君さぁ・・・・・、これに応募してみない?」といった調子で始まる。

ハヤカワ文庫JA
庶務省総務局KISS室 政策白書

2020年、世界を襲ったSARSインパクトにより国際社会は激変した。庶務省総務局、経済インテグレート・サステナブル・ソリューション室、通称KISS室の島崎室長と...

紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

 


というわけで、早瀬耕名義で出すことがはばかられたためにはやせこう名義にしたのか?
とも考えられる、お洒落な恋愛ミステリーで知られる著者の作風から逸脱した怪作w
AIが出てきて誰が誰やらついて行けずに目が回ってしまうSF苦手民にも優しい、スラップスティック掌編集、とか言っちゃうかな。

当方の乏しい知識からは、ちょっと筒井康隆大先生の一時期の作風が思い浮かんだし、
ポップなカバー絵(中村君が島崎室長にプレゼンしている場面からの連想と考えられよう)は、星新一の著作の真鍋博のさし絵を連想した。
こんな本も出ているのだそうで、検索してみるものだわ!
筑摩書房 真鍋博のプラネタリウム ─星新一の挿絵たち / 真鍋 博 著, 星 新一 著

「この連作はふざけていくぞ」という著者の気迫?が伝わってくるカバーなのよね。
カバーのそで
本の部分名称 | 自費出版ならお手軽出版ドットコム
に記載された「はやせこう」の略歴が、「1967年グリフォンズ・ガーデン生まれ。」なのよね。
奥付は漢字名で早瀬耕になっているし、同ページ上部にはちゃんと早瀬耕の略歴が記載してある。
そのうえでグリフォンズ・ガーデン生まれを主張するということは、研究所の大型コンピューター内のAIが勝手に考えたドタバタ冗談ワールドですよぉ!ってことかね。

著者がサラリーマン時代に役所との折衝などに従事したことがあったのかどうかなどは不詳だ。
もっともらしいと感じられる部分もあれば、アリエナイザーが噴き出す部分もあるのではないかと感じた。
だいたい、出来の悪い若手キャリア官僚(島崎女史)を処遇するために閑職の部門をわざわざ作るなどということがあるのだろうか?
支配下の団体などに出向させるのが普通ではないか?
などといい始めるときりがないので、「まあ、そういう世界なのでしょう、はいはい」と受け止めるべきものであろう。
ワシは詳しくはないけど。
(公共・官公庁関連にも強いことでも知られる巨大システム構築会社とか、思い浮かんだりするぅ…)

経産大臣がGDP速報を発表する会見を行う(03「国際原子時(T A I)連動景気対策」)という本書の世界は、現実とは異なるが、そういう設定の世界(SARSインパクトで激変した)なので、どうこう言う筋のものではない。
経済財政政策担当大臣の認知度が低くて可哀想とは言えるかもだが。
経済財政政策担当大臣経済演説・談話 - 内閣府

KISS室=経済インテグレート・サステナブル・ソリューション室なのだそう。
これが途中から名称変更になる。その名も
S E K S 室=総合エコノミー企画ソリューション室
となる

関係ないが、KEKというすごい研究機構(高エネルギー加速器研究機構)があるけど。
KEK|高エネルギー加速器研究機構 - KEK|高エネルギー加速器研究機構

作者がコロナ禍で閉じ籠って長編恋愛ミステリーに取り組みながら、気分転換に妄想したか?
とも思えた。

08「二〇二六年問題対策」は、2026年に丙午(ひのえうま)が再来する中での少子化対策の奇案なのだが、その文末に、
「付記:ぼくは丙午の生まれではありませんが、翌年の三月生まれなので、丙午の恩恵に与って運だけで生きてきました。そろそろ、その運も尽きたところです。 著者 拝」
という一文があり、この個所は著者本人が素面で登場してマジで語っていると看做してよさそうだ。

ぼくこと中村君の実家がどのくらい裕福であるか、も愉快でたまらない。
(うんと気に入った場合に、設定を説明したくなる・・・。内容はなんのこっちゃ感あふれるものだが、愉快愉快)
中村君26歳の設定:
・父は、高校を1年半で中退して、祖父の始めた貸金業で働き始め、祖父を追い出して大きくした(第二の創業)。
「鉛筆1本から大陸間弾道ミサイルまで、貸せないものはない」、「蟻の巣穴からクレムリンまで、貸せないものはない」という巨大リース企業にした。
フォーブスの保有資産ランキングのトップ40にも名を連ねている
・島崎室長には「親のマンションに住んでいる」と告げたが、その内容は、父が投資目的で持っているマンション棟の一室(月額家賃160万円)を黒字減らしのために格安で借りていて、家事は執事がやってくれる~これを島崎室長は、「親と同居」と勘違いしている(両親は別の屋敷に居住)
・父は、姉2人には大学の学費を出してくれたが、ぼくには早く働けとうるさく、高校卒業後の学費は出さないというので、工業高専に進学して卒業を遅らせた
・親莫迦の両親は、2人の姉の就職祝いに、それぞれの就職先の航空会社とシステム構築会社の株式5億円分を(退職まで売るなと厳命して)譲渡。庶務省に就職したぼくには、個人向け国債5億円
・中村家は、マカオに「セントラル・ヴィレッジ」なるホテルも持っている模様(所有しているとの明記はないが、諸事融通が利くうえ、だいたい名前がw)
島崎由香室長の設定:
・ぼくと同期入省(高専卒20歳で就職したぼくの2歳年長)、私立女子中高卒、東大経済学部卒のキャリア官僚、入省6年目
・1966年丙午生まれの母親(娘である室長が落ちた錨のマークのセーラー服の私立女子中高を経て東工大卒業)はIT企業の役員(本の途中で常務に昇格)
・英語は日常会話にも不自由なレベルだが、ロシア語に堪能(大学受験では中国語を選択)
・仕事をしない。自席で上半身のストレッチと携帯電話でゲームをしている

もう、なんのこっちゃ感が愉快千万で、早瀬耕およびはやせこう名義の著作中で、一番好きかも!

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2024年5月 | トップ | 「闘い続けた郵便局長たち 英... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書-エッセイ/小説etc」カテゴリの最新記事