閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

ツタ

2011-10-27 12:51:59 | 日々

道の向こうの桜の紅葉が、少し珍しい色なので
見に行ったら、桜ではなく、桜にからんだツタだった。
高い枝の先のほうまでのぼっている。
見上げるとステンドグラスのようだ。

Fのおじいさんがバス停のそばに桜の若木を植えたのは
もう20年以上前のことだ。
少し離れた集落から、ときどき歩いてやってきて、
周囲の草を刈るなど、手入れをしていた。
お年はすでに80近かったと思う。
話好きだったが、耳が遠く、会話はむずかしかった。

初めて花が咲いた春、おじいさんは木の下にすわり、
お酒を飲んで、ひとりでゆっくり花見をして、
またひとりで帰っていった。
そんな姿を何度か見かけた。

おじいさんが亡くなったあと、桜の木は元気がない。
相変わらず春には白い雲のように花を咲かせるけれど、
近寄ってみると、全体のバランスが崩れ、勢いもない。

ツタの紅葉は美しい。
でも、からまれた木のほうは確実に弱っていく。
ソメイヨシノは園芸品種だから、よけいに弱いのだろう。
この桜はもう長くないかもしれないと思う。

うちの庭ではないから遠慮もあり、Mもそっちまで手が回らず、
誰かがやるのだろうと、世話をせずにいたが、
こうなってしまう前に、きちんと引き継いであげればよかったと、
悔いが残る。

 

もうすぐ飛ぶ、あざみの種。
ほわほわの、きらきら。

コメント
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