閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

あめふらしの謎

2008-05-12 14:11:53 | 

グリムの話のつづき。

翻訳の古いのと新しいのを読み比べた結果、
昭和30年頃に出版された古いほうが、読み慣れているのと、
いかにも昔話らしい古臭さで、わたしは断然好きなのですが、
ひとつ、びっくりしたことがありました。

旧訳で「あめふらし」というタイトルだった話が、
新訳では「てんじくねずみ」になっている!

あめふらしって、海にいる軟体動物ですよね。
てんじくねずみは、日本でいうモルモットのこと。
ぜんぜん違うじゃないですか。

本文には「あめふらし」の形状の説明として
「かわいい小さな動物」と書かれているだけ。
まあ、あれをかわいいという人がいてもいいと思う。
ですが、よく読んでみると、たしかにこの話、
海のあめふらしでは無理があります。
だって、その子、お姫様の結った髪の下にこっそり隠れたり、
見つかって「あっちへお行き!」って放り出されると、
とっとこ走って帰ったり、するんだもの。
あめふらしがそれをやったら、かなりシュールで面白いけれど、
(あめふらしが気に入って買ってくるお姫様も変ですよ)
グリムにそういう趣味があるとはあんまり思えない。

調べてみましたら、
ドイツ語のあめふらしとてんじくねずみは、
単語の最初の4文字と最後の4文字がまったくおんなじで、
真ん中が違うだけなんですね。
直訳すると、あめふらしは「海のうさぎちゃん」で、
てんじくねずみは「海のこぶたちゃん」。

軟体動物のあめふらしには2本のツノがあるので、
それを耳に見立てて「海のうさぎ」だそうです。
てんじくねずみは、英語でもギニーピッグといって、
ころころしてるからとか、食用になるからとか…。
(でも、どうしてこっちにも「海」がつくんだろう?)

そこで閑猫は推理します。
グリム兄弟の出身地ヘッセンはドイツの内陸部。
海の「あめふらし」は生息していません。
「てんじくねずみ」もヨーロッパにはいない南米原産の動物。
(あ、海を渡って来たということで「海」がつくのかも?)
どちらも珍しい生き物として名前だけ知られていて、
おそらく実物を見たことのない人が語り伝えるうちに、
どこかで「うさぎちゃん」と「こぶたちゃん」が
取り違えられてしまった…のではないだろうか。
(真相を知っている人がいたら教えてください)


これを調べている最中、とつぜん、中学の音楽の教科書に
ベートーヴェンの「モルモット」という曲が
のっていたのを思い出しました。
当時タイトルを奇妙に感じたせいで記憶していたのですが、
ベートーヴェンといえばドイツ、しかも
グリム兄弟とほぼ同時代じゃありませんか。
で、何か手がかりがないかと、そっちを調べてみましたら…

(この先、グリムとはどんどん関係なくなり、
探索者は深い森に迷い込んでいってしまうのですが、
手短に結論だけ言っておきますと、
モルモットはモルモットでもモルモットじゃなかった!)

コメント
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