朝、たまにKを車で送っていきます。
ふだんはバス通学なのですが、田舎なので本数が少なく、
始発がここを通るのが7時40分で、これが1時限目にぎりぎり。
朝補講なんかはもちろん受けられないし、
(本人も受ける気まったくないので、それはいいんだけど)
何か用があって早めに行かなきゃいけないときは
バスでは間に合わないのです。
正門に乗りつけるのは嫌なので、少し離れたところで降ろして、
田んぼの中の細道を歩いて行くのを見ながら
ターンして帰ってきます。
じつは、この帰り道がたのしみ。
秋から冬にかけて、とても光のきれいな場所があるからです。
山間の川に沿った細いくねくね道で、両側にはヒノキ林。
斜め前方から朝日がさしこんで、朝靄に光のすじができる。
『ブレードランナー』のリドリー・スコット光線。
その光の中をとおりぬけます。ほんの10秒か15秒くらい。
それはほんとうに息をのむような美しさ。
季節とか、お天気とか、時間とか、太陽の角度とか、
いろんな条件がそろったときにだけ見ることができる光です。
いつも決まった場所。車で20分ほどの間に、一か所だけ。
前に読んだ大島弓子さんの作品にあった
「レンブラント光線」という言葉を思い出します。
リドリー・スコットとレンブラントでは微妙に違う気がするけど、
あれを林の内側から見あげたらきっとレンブラント。
この光のあたる場所は、初夏のある時期になると、
ハッカに似たいい香りでいっぱいになります。
車をとめて探したことがあるけれど、何の植物が香るのか、
どうしてもつきとめることができませんでした。
魔法にかけられた秘密の場所。
天使の立っているところ。