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蔵馬ウケネタ、日常のことなど思った事を綴る。

血の旋律と言う小説を、昔書いていました

2019年01月31日 00時26分38秒 | 蔵馬受けblog内小説



旧ブログから
引っ張ってきました。

一時期@蔵馬または飛影がヴァンパイア と言うネタにハマっていて
そのときに書いてみたものです。

ハッピー溢れる話ではないのですが
ちょっと気に入っていたので
そのまま引っ張ってきました。


もしかしたら こういう話は駄目って言う人もいるかもしれないのですが
この話ハッピーバージョンもあるんです。
これはアンハッピーバージョン。

明日かあさってにそっちも書いてみようと思っています。

たまにはテイストが違う話にもお付き合いいただけたら幸いです。


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血の旋律

静かに横たわるからだがやけに綺麗だった。

桜が咲いている、その丘の上。
満開の桜は美し過ぎて、却って恐ろしかった。

夜の闇の中、今日はなぜか月がくっきりとはっきり浮かび上がっていた。

「…幽助。」
音もなくその人が姿を現した。
「コエンマ、か。」
幽助の手には血が流れていた。
腕を伝う血がまだ暖かく、恐ろしいほどにはっきりと、幽助の頭まで上ってくるような
感覚があった。一歩幽助に近づくと、なれぬ匂いにコエンマは口を覆った。
「…よかったのか」
「よかった。」
後悔はしてない、と幽助はしゃがんだ。
そばに横たわるものはふたつのからだ。

…飛影と蔵馬。

蔵馬は静かに眠っているようで、そしてまるで生きているようだった。
飛影はまだその強さを携えているようで…
二人とも動き出しそうで、コエンマは落ち着かなかった。

「後悔はしてない。こうするしかなかった」
「…だが---」
チャッ、と音がして銃が地に落ちた。

二人を貫いた銃。

仕方がなかったと幽助は言った。
コエンマは責めるでもなく---静かに蔵馬の頬に触れた。

---本当は、こうなることがどこかでわかっていた。
ヴァンパイアの襲撃を受けたときに、あのときに。
鴉がヴァンパイアの頭としてやってきて蔵馬に告げた。
飛影の本当の素性。
魔族ではなく…ヴァンパイア。
血をすすって生きる飛影にとって恋は魔物であり毒だった。
蔵馬が飛影と結ばれる度に飛影は飢えを増していく。
本当ならば首からすべての血を受けたいはずだと。
だが今はタブレットで補っている。
蔵馬をかみ殺すわけには行かないから。
大丈夫だと言い飛影は蔵馬には決して手を出そうとしなかった。
だが飛影が痛々しく、蔵馬はどうするか考え抜いた。
迷いに迷い悩み続け、蔵馬はあることを知った。
ヴァンパイア一人と戦って一度勝てば、勝利一度につき一人、ヴァンパイアを人間に覚醒させることが出来ると。


無理だと言うことはわかっていた。
それでも、それでも苦悩する飛影を見ていたくなくて蔵馬は鴉に向かっていった。
腕を傷つけられて戻ってきた蔵馬は血まみれで、それが逆に飛影の興奮剤になった。
本能はうずきだす。

「…あ!!」
押さえ込んで蔵馬の腕をなめる飛影の瞳はすでにまともではなかった。
もがいていた蔵馬はやがてあきらめて抵抗をやめた。
めまいで失神した蔵馬を後で見た飛影は言葉を失った。

…幽助に指令が下ったのはそんなときだった。
人間を襲ったヴァンパイア。
どうにか、すきなように処理をしろといわれた。

我に返った飛影を見て幽助は驚いたが、すぐそばに落ちている蔵馬の体にもっと驚いた。
「…蔵馬…」
何がおきたかを追求することは出来なかった。
軽いめまいですんでいることが、毒となったか幸いと言うべきか、蔵馬は浅い息をしていた。

どうするかはお前に任せる。コエンマはそう言っていたが、それを見たときに幽助は行動を決めた。

…二人を撃つしかない。

このまま生かすならば地獄は続く。
蔵馬をかみ殺すことは出来ず、だが飢えはまたやってくる。
タブレットでは補えないものが来る。

銃を構えた幽助を見た飛影は不敵に笑い、そして蔵馬を抱えた。
一緒に撃てと言った。


「…後悔はしてない」
力なく言う幽助にコエンマは何も言わず、飛影と蔵馬のからだを抱えた。
「…つらい指令で…悪かった」


それ以外コエンマに何を言うことが出来ただろう。

飛影に蔵馬が想いを告げたときに、とめるべきだったのかもしれない。
だが、それは出来なかった。
ただ、ごまかしてきた。
飛影の飢えが激しくならぬように。
想いで本能がとめられぬように…無駄だった。

桜が、小さく揺れていた。



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