まちづくりはFeel-Do Work!考えるより感じよう、みずから動き、汗をかこう!(旧“まちづくり”便利帳)

まちづくりの支援者から当事者へ。立ち位置の変化に応じて、実践で培った学びの記録。もう一人の自分へのメッセージ。

◎金子郁容著『新版・コミュニティ・ソリューション』岩波書店

2004-12-09 00:00:00 | おすすめ書籍など
新版 コミュニティ・ソリューション―ボランタリーな問題解決に向けて

岩波書店

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本の帯には、次のようなコメントがあります。

「社会を見回すと、これまでの政府や企業のやり方だけではどうにもうまくいかない問題がわんさとあることに気付く。公的サービスがうまくいかないといって、では全部を民営化したらいいかというと、話はそう簡単ではない。その中で、そのような問題の少なくとも一部を、魅力的なプロセスを作りながらきちんと解決しているボランタリーなコミュニティがそこここに見受けられる。その底流には、時代の変化の大きなうねりがある。それにコミュニティ・ソリューションという名をつけて、ストーリー性を付与して記述できないか。」

冒頭に登場するリナックスのエピソードは、やや専門的で私には難しかったですが、指揮者のいないオーケストラや禁煙マラソン、コミュニティスクール等のエピソードも大変興味深く、筋の一本通った示唆に富む一冊です。
ボランタリーなコミュニティ(ボランタリー・コモンズ)は、豊かなソーシャル・キャピタルを背景に、想像以上に大きな経済効果を発揮するだけでなく、同時にリスク回避を可能にしていることがよくわかります。これこそ最も優れたリスクマネジメントで、実は日本的経営の強みの本質はここに由来しているのではないでしょうか。コミュニティを構成するメンバーの一人一人が、それぞれの技能や知恵を出し合って、余力をフル活用する、いわばグリッド・コンピューティングの社会版。そして、ボランタリー・コモンズでは、まるで一つの生命体のように、トップの指示を待つことなく、細部が修復作業を始めます。人体に喩えるならば、体の一部が怪我や故障した場合、脳が修復作業を逐一指示をするわけではなく、『自然治癒力』と呼ぶべき力が素早く、しかも合理的に働くのと同じことです(生物というのはその長年の進化の過程で、実に無駄なくできているのです)。

本書には登場しませんが、著者が語るコミュニティ・ソリューションの代表例として、日本で二番目に大きな湖”霞ヶ浦(茨城県)”の『アサザ・プロジェクト』があります。この事業の凄いところは、本書の事例がある意味結果的に「中心のないネットワーク」となったのに対し、『アサザ・プロジェクト』は”意識的”に自然治癒力を活用してきたことにあり、この点で他の事例と一線を駕していると言えるでしょう。

著者は、コミュニティ・ソリューションの代表例として、指揮者のいないオーケストラ「オルフェウス室内管弦楽団」とパソコンの動作環境を規定するOS(Operating System)の「リナックス」の二つを冒頭に紹介。いずれも『自発性』と『相互信頼』に基づいた統制力ある「中心のないネットワーク」とし、これを可能にするためには、次の5つが必要だと述べています。

・ルール…自生した規則性
・ロール…自発的に割り振られた役割性
・ツール…コミュニケーションのための道具性
・弱さの強さ
・相互編集プロセスと編集者


また、個人的には、著者が日本に古くからある『講・結・座』に着目している点は、非常に素晴らしく、示唆に富んでいると思います。私も、これをヒントに、某保険会社にある提案をさせてもらいました。

今後の社会システムを考える上で、間違いなく重要な一冊となるでしょう。

Amazonでの紹介

  ★本書に直接関係する情報リンク★
本書「食と森の認証」の食を研究した慶応大学SFC椎名絵里香氏作成の概要
椎名絵里香氏によるプロジェクト活動報告
椎名絵里香氏の修論「SISによる社会信頼システム構築の可能性~有機農産物認証の事例から~」
「生命と国土の安全保障」をめざす特定非営利活動法人アクシス委員会連合
環境保全型農産物生産・加工・流通認証協議会 特定非営利活動法人ASAC
コミュニティ・ソリューションの実証研究プロジェクト「VCOM」

  ★コミュニティ・ソリューションが働いている活動の情報リンク★
『講とエコマネー ─エコマネーは現代の講か─』秋山卓氏
受注の“頼母子講”で中小業者の生き残り図る(京都経済新聞2004年11月1日掲載より)
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1 コメント

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あ・・・ (leo)
2004-12-04 04:36:21
何気にクリスマス仕様!w

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