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お勉強2211

2018年05月03日 | 本と雑誌
累犯障害者 山本 譲司 1~327 読了 57

 内閣府が発行している『障害者白書』の平成十八年版によれば、「現在、日本全国の障害者数は、約六五十五万九〇〇〇人」となっている。その内訳は、身体障害者が約三五一万六〇〇〇人(うち聴覚障害者・約三十四万六〇〇〇人、視覚障害者・約三〇万一〇〇〇人)、精神障害者が約二五八万四〇〇〇人、知的障害者が約四五万九〇〇〇人だ。
 しかし、この知的障害者の総数は、非常に疑わしい。
 人類における知的障害者の出生率は、全体の二%から三%といわれている。だが、四五万九〇〇〇人だと、わが国総人口の〇.三六%にしかならない。欧米各国では、それぞれの国の知的障害者の数は、国民全体の二%から2.5%と報告されているのだ。「日本人には知的障害者が生まれにくい」という医学的データは、どこにもない。要するに、四五万九〇〇〇人というのは、障害者手帳所持者の数なのである。現在、何とか福祉行政と繋がっている人たちの数にすぎない。本来なら知的障害者は、日本全国に二四〇万人から三六〇万人いてもおかしくないはずである。P283

 この文庫版『累犯障害者』が出版される二〇〇九年四月一日、罪を犯した障害者への社会復帰支援策は、大きく動き出すことになる。法務省と厚生労働省は、私たちの政策提言に対して、ほぼ満額回答で応えてくれたのである。
 まず、法務省関連についてだが、矯正局は、二〇〇九年度より、現在七八カ所にある刑務所すべてに、民間の社会福祉士を常勤体制で配置することとした。社会福祉士には、障害のある受刑者や高齢受刑者を福祉に繋ぐ、ソーシャルワーカーとしての役割を担ってもらう予定だ。
 また保護局は、更生保護施設に年間千名ほどの障害者や高齢受刑者を出所後三カ月程度受け入れてもらうため、その予算を計上した。さらに、受け入れた人たちの退所後を見据え、療育手帳取得の手続きなどを行う社会福祉士を全国五七カ所の更生保護施設に配置することにしている。
 次に、厚生労働省関連についてである。まず目玉政策となるのは、障害のある受刑者に対して、その服役段階からう駆使施設探しなどの支援にあたる「地域生活定着支援センター」の新設だ。各都道府県に一カ所ずつ設置する予定で、スタッフは一センターあたり四名。福祉や医療制度だけではなく、司法制度にも精通した人材が望まれるだけに、その養成や確保にはそれなりの時間を追うすることになるであろう。酔って、運営開始は、二〇〇九年の七月となっている。なにはともあれ、刑務所と福祉サービスとをつなぐ架け橋が誕生するのだ。P314