ケミストの日常

大学化学系教員の日々考えること。
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四国大学の学位問題

2010-11-11 17:36:59 | 大学時事
論文未提出・概要版だけで博士号を授与した大学読売新聞 11月11日(木)11時2分配信
四国大(徳島市応神町)が、博士論文が提出されていないにもかかわらず、同大大学院経営情報学研究科長の男性教授(65)と同科の男性教授(74)に博士号を授与していたことがわかった。

 文部科学省の省令では、博士論文の提出と、論文を1年以内に印刷、公表しなければならないとしているが、2人が審査に提出したのは、論文の概要版のみだった。同大学では「博士号の取り消しは考えていない」としている。

 同大学によると、研究科長は2006年7月に、男性教授は08年12月に概要版を提出。それぞれ、経営情報学部の教授3人でつくる審査委員会で審査され、研究科長は07年1月、男性教授は09年3月に博士号を取得した。研究科長は今秋に、論文を完成させたが、男性教授はまだ完成させていない。


学位論文提出なしで学位を出した。
学位を受けたのは、大学に所属する教授二名。

ざっとまとめるとこんな感じ。

日本の文部科学省認可の大学でディプロマ・ミルのようなことがなされていた?、というのが第一印象。

四国大学のホームページを見てみると謝罪のページが。

博士の学位審査に関する報道について

本学における博士の学位審査において、梗概に基づく論文審査であったことに対して、この度ご指摘をいただきました。
 今後、事実関係を十分に調査し、その結果を踏まえ、適正な対応をとりたいと考えています。
 取り急ぎ、皆様方にご心配をおかけしたことにつきまして心よりお詫び申し上げます。


研究科長と言うことで匿名報道でも個人特定が可能。
研究科長からのメッセージを見ると、「経営情報学研究科長 横畠 康吉」と出ています。

また、私学の文系学部で学位持ちで報道の年齢だとDマルゴウ相当と見て担当教員リストから「博士(経営情報学)」の学位持ちを探すと、横畠康吉研究科長を除くと若山浩司教授のみが該当します。

個人特定してもしょうがないですけれどね。

研究科の来歴はというと
1992年 4月四国女子大学を四国大学に、四国女子大学短期大学部を四国大学短期大学部に改称し共学移行
四国大学に経営情報学部経営情報学科を増設
1999年 4月大学院経営情報学研究科(修士課程)開設
2001年 4月大学院経営情報学研究科に博士後期課程新設を増設


バブル期と以降の大学進学増に対応した増設、以降の大学院重点化の流れに乗った修士、博士課程新設、と言った感じです。
多分、当初は設置審の関係でそれなりの教員を招へいしてるはずですが、定年その他で職をさり、ってなタイミングです。

共同通信の記事が少し詳しいです。
四国大、論文未完の教授に博士号 文科省「違反」
 四国大(徳島市)が2007年と09年、学位論文が未完成の男性教授2人に、論文の概要の審査だけで博士号を授与していたことが10日、大学への取材で分かった。

 文部科学省は、省令で概要だけでの授与を認めておらず、違反に当たるとみている。省令では学位授与後1年以内に論文を印刷公表するとされているが、2人は論文を公表していない。

 大学側は「審査を担当した教授らは『概要だけでも骨格やエッセンスなど十分評価でき、問題なかった』と言っており、学位の取り消しは考えていない」と説明。ただ事実関係を文科省に報告した上で「指導があれば従う」としている。

 大学によると、2人は大学院経営情報学研究科の研究科長(65)と、同研究科教授(74)。約30~50ページの概要を提出して審査を受け、研究科長は07年1月、教授は09年3月、博士号が授与された。


「大学への取材」はどこがやったのか。
徳島市の大学なら徳島新聞?、ということで新聞サイトに行って見ると。
四国大が論文未完2教授に博士号を授与 文科省「省令に違反」
 四国大学(徳島市応神町古川)が、学位論文の提出がないまま審査し、同大大学院の経営情報学研究科長を務める男性教授(65)と同研究科の男性教授(74)に博士号を与えていたことが9日、徳島新聞の取材で分かった。博士号取得の際には論文を提出し、審査を受けることが学校教育法に基づく文部科学省令「学位規則」に定められている。2人の論文は学位取得時も完成しておらず、審査に提出されたのは「梗概(こうがい)」と呼ばれる概要版だった。文科省大学振興課は「概要版で博士号を授与することはあり得ず、省令違反に当たる」としている。

 四国大によると、研究科長は2007年1月、男性教授は09年3月に博士号を取得した。研究科長は学位取得後に論文を仕上げたが、男性教授は論文をまだ完成させていない。

 研究科長は06年7月に約50ページの、男性教授は08年12月に約30ページの概要版をそれぞれ提出した。

 博士号の学位授与は本来、3人以上の教員でつくる論文審査委員会が論文を審査し、十数人の研究科の教員からなる研究科委員会が可否を判断して決まるが、論文の代わりに提出された概要版を審査していた。

 文科省は「概要版で審査はできないし、学位を認定する段階で論文が完成していないといけない」とする。

 また省令では、学位授与から1年以内に論文を印刷・公表しなければならない。研究科長の論文は、国立国会図書館や四国大学付属図書館にはなく、学会誌への掲載や商業出版もされていなかった。

 研究科長は論文を公表していないことを認め、「多忙で論文の資料作成ができなかった。現在、製本しており、12月10日ごろには四国大学付属図書館に収めたい」と話す。

 男性教授は「数多くの論文を書いてきており、これまでの実績で学位を与えられるものと思った」と釈明する。

 福岡登学長は「事実関係を確認し、対処を考える」と話している。

 四国大は1999年に同研究科の修士課程、01年に博士後期課程を設けた。研究科長は06年から経営情報学部長、07年からは経営情報学研究科長を兼任。男性教授は1995年から同学部の教授を務めている。


一番詳細。

「徳島新聞の取材で」ということで、ネタ元はここ。

しかし、よく、こんな事実関係を見つけ出したな、というのが率直な感想。
なにか学内での人間関係で「タレコミ」でもされたとか、敵がいて徹底的な粗さがしをされてたとかでもない限り、まず外部の報道関係者がこんな話題にきづくとは思えない。
ってか、学位持ちの記者はほとんどいないだろうから、学位授与のプロセスがどうなっているかわからないだろう、という入り口からして無理筋。

ただし、学位の安売り、身内への甘い授与、などが常態化していたり、ということになるとすると、ことは結構問題。

大学院重点化で地方大学にも博士課程が設けられ、それが私学にも広がり、それに合わせて、博士課程の定員が若干名から人数を示す必要がでてきて、定員充足に四苦八苦する状況。
理系では、コースドクターが主流で教員の多くは学位持ちですが、文系は「博士」の位置づけが昔は今と違っていたという歴史があり、こういった歪みは文系で特に出やすい傾向でもあるかと思います。

「事実関係を十分に調査し、その結果を踏まえ、適正な対応をとりたい」という大学の続報を期待しましょうか。
実は、他の私大でも似たようなことがあったり?、なんて不安もありますが。
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6 コメント

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発覚の発端 (スロー)
2010-11-16 14:11:29
紙の方の徳島新聞の記事では、研究科長と一緒に学位審査受けた別の男性が、印刷論文を事務に届け、後日それを国会図書館に送ったか確認したところ事務室に放置されていて、その理由を聞くと”大学側から「論文を1本だけ送り、ほかの論文がどうなっているかを聞かれると困るので、送付していなかった」と説明された”ことが不正発覚の発端のようです。バカとしか言いようがないですね。
Unknown (chem@u)
2010-11-16 18:41:39
情報ありがとうございます。

「研究科長と一緒に学位審査受けた別の男性」は今回話題の二名と別でしょうから、そうすると四国大学では身内に甘い学位審査をしてきた、とも受け取れそうですね。

今回は今のところ形式論のみが俎上に上がっていますが、中身はどうなんだろう?、という関心も当然あがってきます。

論文再提出、再審査、学位再授与となって学位論文が公開されると、注目を集めそう。


Unknown (スロー)
2010-11-17 00:31:33
”身内に甘い学位審査”どころか、今回概要版で学位授与されていた2教授は、学位を持っていない段階で、お互いの学位審査を行っており、審査そのものが形骸化していたことを物語っています。

学位再授与されたら、是非ともPDFで一般公開して欲しいものだと思っています。が、学位論文の著作権は、大学?本人?出版社?その辺がよく分からないですね。
Unknown (chem@u)
2010-11-17 19:23:04
なるほど。
そういった事情ですか。

理系だと、学位なしでD論の審査を担当するなどとても考えられませんけれど。

私学文系での新設課程における問題なのか、四国大学「だけ」での問題なのか、なんてあたりにも関心があります。

なんか、文科から、学位に関する緊急調査なんてのが降りてきそう。


検証 四国大博士号問題 (スロー)
2010-11-23 02:39:53
徳島新聞紙上で、今回の四国大の問題を検証していく特集が始まりました。おそらく特集が終わるまでWEBでは見れないと思います。が、その都度、私のブログにうpしていきます。参考になれば幸いです。
Unknown (chem@u)
2010-11-23 21:28:13
丁寧なご紹介ありがとうございます。
こちらも多少のタイムラグを入れますが、文科省からこの件絡みの調査などが降りてきたら話題にします。

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