陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

国民投票法が5月18日から施行される

2010-05-10 01:06:52 | 国内政治:議会と政党
 「日本国憲法の改正手続きに関する法律(国民投票法)」が今月18日から施行されるが、余り話題になっていないようだ。この法律は、平成19年(2007年)5月14日に安倍晋三内閣により国会を通過、同年5月18日に告示された。

 政府広報オンラインによる説明では、
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200802/3.html

憲法改正のための国民投票の流れ

憲法改正のための国民投票のおおまかな流れは、以下のとおりになります。

1.憲法改正原案の発議

法律で定める一定数(衆議院100人以上、参議院50人以上)の国会議員の賛成により、憲法改正案の原案(憲法改正原案)が発議されます。

2.憲法改正の発議

憲法改正原案は、衆議院憲法審査会および参議院憲法審査会で審議され、衆議院本会議および参議院本会議にて3分の2以上の賛成で可決されます。両院で可決した場合は、国会が憲法改正の発議を行い、国民に提案したものとされます。

3.国民投票の期日

国民投票の期日は、憲法改正の発議をした日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に国民投票が行われます。

4.広報・周知

憲法改正案の内容を国民に知ってもらうため、国民投票広報協議会(各議院の議員から委員を10人ずつ選任)が設置されます。憲法改正案の内容や賛成・反対の意見、そのほか参考となる情報を掲載した国民投票公報の原稿作成、投票記載所に掲示する憲法改正案要旨の作成、憲法改正案などを広報するためのテレビ、ラジオ、新聞広告を行います。また、総務大臣、中央選挙管理会、都道府県および市町村の選挙管理委員会は、国民投票の方法や国民投票運動の規制、そのほか、国民投票の手続きに関し必要な事項を国民に周知することとされています。

5.国民投票運動

憲法改正案に対し、賛成または反対の投票をし、またはしないよう勧誘することを「国民投票運動」といいます。政党やその他の団体、マスコミ、個人などが、一定のルールのもとに「国民投票運動」を行うことができます。例えば、投票期日14日前からは、国民投票広報協議会が行う広報のための放送を除き、テレビやラジオの広告放送は制限されます。

6.投票

投票は、国民投票にかかる憲法改正案ごとに、一人一票になります。投票用紙には、賛成の文字および反対の文字が印刷され、憲法改正案に対し賛成するときは賛成の文字を囲んで○の記号を書き、反対するときは反対の文字を囲んで○の記号を書き、投票箱に投函(とうかん)します。また、選挙の投票と同じく、期日前投票(投票期日前14日から)や不在者投票、在外投票などが認められています。

(投票用紙の図解があるが、省略)

7.開票
憲法改正案に対する賛成の投票の数が投票総数(賛成の投票の数および反対の投票の数を合計した数)の2分の1を超えた場合は、国民の承認があったものとなり、内閣総理大臣は直ちに憲法改正の公布のための手続きを執ります。

8.結果を官報で告示

国民投票の結果を官報で告示します。


 国民投票権者の年齢は、18才以上とされるが、公職選挙法が改正されるまで当面は20才以上の成人に限定される。これに基いて、自民党は今国会の会期中に憲法改正原案を提出する構えであるが、その内容は国会発議要件の緩和である。読売新聞によると


憲法改正原案、自民提出へ…発議要件緩和

 自民党は、今月18日の国民投票法施行後、今国会の会期中に憲法改正原案を提出する方針を固めた。

 原案は、憲法96条が定める憲法改正の発議要件の緩和を軸に検討している。衆参両院の憲法審査会が機能していないため、改正原案が審査される見通しはないが、参院選に向け、憲法改正問題に積極的な姿勢を示す狙いがある。憲法96条は、国会が憲法改正を国民に発議する際の要件を「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」と定めている。自民党は憲法改正を容易にするため、これを「過半数の賛成」とする方向で調整している。

 国民投票法は憲法改正の手続きを定めた法律で、2007年に制定された。同法制定に伴う国会法改正で改正原案は国民投票法施行後、衆院で100人以上、参院で50人以上の賛成で国会に提出できるようになる。自民党は衆参両院で必要議員数を単独で確保しており、提出時期などは国会の審議状況を見ながら検討する。

(2010年5月3日03時08分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100502-OYT1T00726.htm



 施行以来63年を経過して、ようやく「日本国憲法」改正の手続きが完成した。現憲法は改正発議に国会議員総数の3分の2以上の賛成を必要とする硬質憲法だから、これをまず緩和すると言うのが自民党の考えである。

 民主党勢力の圧倒的な現国会では、自民党が改正原案を提出しても店晒しになるだけであろうが、国民の憲法改正論議を高める上で有効と思う。更に読売新聞記事によると、


憲法の積極論議アピール…自民改正原案

 自民党が今国会に憲法改正原案を提出する方針を固めたのは、参院選に向け、停滞する国会の憲法論議に風穴を開け、この問題に消極的な民主党との違いを際立たせる狙いがある。

 2007年5月に成立した国民投票法が18日施行されることで、現行憲法改正の法的枠組みが初めて整う。しかし、同法成立を受け、憲法改正原案を審査するため衆参両院に設置された憲法審査会は委員も決まらず、機能していない。民主党が審査会始動に否定的だったことが大きな要因で、同党が主導権を握る参院は審査会の運営方法などを定める審査会規程すら制定されていない。

 民主党は憲法問題に関し、党内に意見の隔たりがある。政権獲得後は護憲を掲げる社民党と連立政権を組んでおり、「憲法そのものの本質にかかわる議論はしていない」(高嶋良充筆頭副幹事長)状態だ。

 参院の現状には、民主党内にも「違法状態」(西岡武夫参院議院運営委員長)との声があるが、規程制定は今国会も見送られる見通しだ。国民投票法付則に盛り込まれた選挙権年齢引き下げなども実現していない。

 こうした中、自民党は野党転落後、憲法問題を民主党との対立軸の一つにしようと憲法論議に従来より、力を入れてきた。参院選では憲法改正を公約の柱と位置づけ、憲法96条の改正発議要件緩和も盛り込む方針だ。

 「たなざらし」となるのを覚悟で、公約の内容を改正原案として国会に提出するのも、提出が解禁された直後に行動を起こすことで、「国の形を真剣に考えている責任政党は、自民党だと訴えることができる」(党幹部)との思惑がある。

(2010年5月3日10時21分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100502-OYT1T00753.htm


 自民党の憲法改正推進本部の事務局長は、元防衛庁長官の中谷元氏。彼は、まず憲法改正の国会発議要件を緩和させた後、逐次党内でまとまった条項があれば、国会へ提出して憲法改正を促進したいと述べている。

 憲法前文と第9条が議論されるのは、まだまだ先のことになりそうだ。

 今回施行の国民投票法は、憲法改正に限られているが、一般行政に関しても重要課題に関してはスイス、フランス、イタリアなどのように国民投票で決めるシステムが出来ることを希望する。

 この国民投票法に批判的な北海道新聞の社説を、参考の意味で全文引用する。


国民投票法 このまま施行でよいか
(4月18日 北海道新聞・社説)

 このまま施行してよいのだろうか。そうした懸念がぬぐい切れない。

 2007年5月に成立した国民投票法のことだ。

 同法は公布から3年が経過し、1カ月後の5月18日には施行期日を迎える。

 憲法改正の手続きを定めた同法の施行により、法律上は国会による改憲の発議が可能になる。

 もとより、直ちに改憲が現実の政治日程に上るという状況にはない。鳩山由紀夫首相は改憲論者だが、政権の優先課題としていま取り組む意向はないようだ。国会で与野党が正面から論じあう場面もない。

 だがそうであればこそ、立ち止まって考える必要がありはしないか。現状のまま施行するには、この法律はあまりに疑問が多いのだ。

 3年前のことを思い出したい。

 当時の安倍晋三政権は「任期中の改憲」を掲げ、国民投票法をその重要な一歩と位置づけていた。安倍氏の号令の下、自民、公明両党は野党側の反対を押し切って強引に採決に持ち込み成立させた。

 憲法改正手続きという国の大本にかかわる事柄は与野党の合意が大前提であるべきだ。それを欠いた同法の成立過程そのものが問題だ。

 次に内容である。同法は18歳以上に投票権を与えているが、付則で施行までに行うとしていた関連の法改正は全く手付かずだ。

 民法の成人年齢の引き下げや、公職選挙法の18歳投票権などの実現が必要となるのに、その見通しすら立っていない。

 さらに、成立時に参院の特別委が行った18項目にもわたる付帯決議はその後どう扱われたのか。

 国民投票の対象範囲や最低投票率の設定、公務員や教員の運動に対する規制のあり方など、どれも民主主義の基本設計にかかわるテーマだ。だからこそ決議は「十分な検討」と「適切な措置」を求めた。

 にもかかわらず国会では、論議らしい論議は交わされていない。

 そもそも国民投票法には法曹界から「欠陥法」との指摘があった。成立の経緯に加え、条文の問題点も解消されていないためだ。この法律は3年の経過を待たず、廃止して全面的にやり直すのが筋だった。

 そうした取り組みをしないまま、時間を空費した国会は怠慢のそしりを免れないだろう。

 道内を含めて各地の市民団体などが、国民投票法の凍結を求める署名を呼び掛けている。日本弁護士連合会も宇都宮健児会長の声明で「施行延期」を求めた。

 国会は与野党協議の場を設け、同法の扱いを論議すべきだ。それが国民代表の最低限の責務である。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/226764.html
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