シャーロットの涙

☆映画と音楽、その他、芸術鑑賞記録と残しておきたい日々の雑記☆

つぐない

2008-04-22 17:43:08 | 映画「た」行の作品
息苦しさと切なさとやるせなさと…

そんな胸をギュッと締め付けられるような気持ち。
私の場合は映像の美しさも基より、音楽にもそんな要素を感じていたのだけど、かなり映画的な演出は細部にわたって見事だった。もちろん物語にも引っ張られて見る事が出来て期待通りの作品だった。

でも、やっぱり最初は音楽にうるささを感じてしまったの;音楽はダリオ・マリアネッリ。もう少し控えめだった前作の「プライドと偏見」の方はサントラも即購入となったけれど。。。でも今回は壮大な小説のスケール感もあるし、ただのラブストーリーで終らせない、格調を引き上げているのも美しいスコアのおかげも十分あると思えたかな。
タイプライターが今のPCなどのキータッチとは違うように、音楽もこの時代のものならこの音量で正解だなと、今思うと自分なりに納得はできる。
アナログ感たっぷりの重苦しいタイプライターのキーの音を音楽として使うなんて、とても面白い発想な演出だったし、ピアノのタッチがより美しく響いて聴こえてこようというもの。
ピアノは「プライドと偏見」でも参加した、ジャン=イヴ・ティボーテが弾いている。フランス人らしい甘い香り立つ音を引き出すお方だけど、彼は私が愛してやまないアルド・チッコーリも師事してるのよね。・・・ピアノは全篇にわたって私をとても魅了してくれた。なんというか…ベートーヴェン的な哀調さがとってもツボだった。

映画を見る前には原作を読まない主義だけど、映画をみて原作を読みたくなる作品も稀。でも本作は読んでみたくなった。原作が現代イギリス文学の巨匠イアン・マキューアンの「贖罪」だからという事もあるけれど、「Jの悲劇」を映画鑑賞後に読んで、とても映画とリンクできた事もあり、もっとその原作の素晴らしさを堪能できたりしたのだもの。
本作もデリケートなメンタル部分を監督やスタッフ達はかなり努力して引き出して映像化したのかしら。想像したより主人公であるブライオニーの心理に私には終始惹き付けられてしまえたもの。
何の前知識もない私は、まさにロミオとジュリエット的な悲恋の物語かと思っていたけれど、これは罪の償いさえも許されないような時代の波にもまれた女性の物語であって、哀しくも繊細な心にビリビリと共鳴させながら見ることが出来てしまった。それに彼女を時代ごとに3人の女優が演じ分けるというのも、それぞれの個性が加味されてブライオニーという人物の複雑さをより作り出しているように思えた。マリオンが演じたピアフのように晩年まで一人で演じきってしまうものも素晴らしいけれど、あえて3人でバトンを渡しているところも、かなり自然で違和感もなく、そんなところも見事なキャスティングだったしね。髪型が一生少女の頃から変わらないっていうのは少し変な気もするけど。笑

3人のうち少女時代を演じたシアーシャ・ローナンの頃の心にとりわけ共鳴度が高かった私は、彼女の犯してしまった罪というものを罪と果たして位置づけてしまっていいのか、ちょっと息苦しくなってしまった。もちろん、嘘をついてしまったことが結果的に恋人達の幸せな時間を奪ってしまったきっかけとなってしまったのだろうけど。…でも彼女もロビーに好意を寄せていたからこそだと思えば彼女を責めることなど出来ようか。
少女の頃に抱く妄想はとても純粋で崇高な美しさで満たされていて、肉欲などは穢れのように感じるというか嫌悪感すら抱くもので。そんな事は誰しも経験があろう。
ましてや他人ではなく姉とロビーの交わりを目の前で見てしまったなんて、そんな時の彼女の心がどんな状態であったかと思うと胸が張り裂けそうに痛かった。そしてだからこそロモーラが演じた時代のブライオニーの自虐的な様子に、私はなんとも言えずやるせなさでいっぱいになってしまった。

また、ブライオニーの胸のうちはさりげなく態度や表情でも示されていて、その事細かい演出や脚本の出来にとても感激してしまった。
シアーシャが心ざわめきながら手紙を持って走る姿、草をたたくように何かを振り回している様子、また頭の中に浮かんだ物語を急ぐように書き留める様子、わざと川で溺れて助けてくれたロビーに対する思いを投げかけるところなど、少女時代の様々な感情をちょっとした行いとして初々しく切り取るそのカメラ目線の美しい構図と流れにグッと気持ちをつかまれてしまっていたのだ。「エンジェル」の時と同じ様に、何度も心の中を覗いてはその時にしてしまう行いを、特に理由付けもしないまま自然に彼女の気持ちに寄り添えてしまったのよね。多分、それって私も妄想少女だったから容易だったのかもしれないけれど;

私はセシーリアとロビーの悲恋に心惹かれるのかと自分では覚悟?(笑)してハンカチを用意していたのだけど、泣きのポイントはもっと違うところに多々あって少し意表をつかれた感じ。もちろんキーラ嬢もジェイムズ君も迫真にせまるデリケートさある表情にグッときてしまったけれど;
…一つは何人ものの少女達が殺されて横たわっていたシーン。そして、ロビーが母?に足を洗ってもらうシーン。そして男達が海辺で歌を歌うシーン。
やはり戦争というものが彼らの人生を一瞬にして変えてしまったことを悟り、なんだか言いようのない悔しさを感じて涙も溢れてしまった。そして悔しさといえば、あのチョコレートのポール・マーシャルとローラが結婚しちゃうところ。つぐないはあのチョコレートオヤジにさせるべきぢゃんかっ。怒っ。ブライオニーのせいではないのだっ。
・・・そしてジェイムズ君が手紙を抱えて息絶えていたシーン

時代の流れに巻き込まれそれに抵抗する余地も無く、つぐなう事も愛し合う事も出来ない3人の姿を美しい旋律が哀しく彩る。余計に哀しく響くピアノやヴァイオリンの音を聴いていると、人間の愚かさはもっと別なところにあって、つぐないの心は何かしら全ての人間が持つべきではないのかと、色んな時代を生き抜いた恋人達と愚かな人達へと思いを馳せながら・・・なんだかやるせなくなった。


Atonement [Music from the Motion Picture]
Caroline Dale,Claude Debussy,Dario Marianelli,Benjamin Wallfisch,Brendan Power,English Chamber Orchestra,Jean-Yves Thibaudet
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
製作年 : 2007年
製作国 : イギリス
配給 : 東宝東和
上映時間 : 123分

監督 : ジョー・ライト
原作 : イアン・マキューアン
出演 : キーラ・ナイトレイ 、 ジェイムズ・マカヴォイ 、 シーアシャ・ローナン
    ロモーラ・ガライ 、 ヴァネッサ・レッドグレイヴ 、 ブレンダ・ブレッシン

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第二次世界大戦前夜、夏のイングランド。政府官僚の娘で未来の大作家を自負する13歳のブライオニーは、大学を卒業したばかりの姉セシーリアと使用人の息子で幼なじみのロビーのただならぬ関係を察知し、ロビーへの警戒心を抱く。そして事件は起きる。ブライオニーの嘘の証言によって、愛しあう恋人たちは無残にも引き裂かれ、犯した過ちの重さにブライオニーが気づいたときには、泥沼の戦争が始まっていた。(goo映画)
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37 コメント

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ブライオニーの物語 (Campanula)
2008-04-22 19:20:40
少なくとも映画は純粋にブライオニーの物語だと感じました。
想いを遂げられずに短い一生を終えた二人の人生をも背負って歩いた長い道のりを思うと今でも涙が出ます。初見の時には納得できない!と思った彼女の贖罪も、あれしか出来なかったと考えると仕方ないかな?と。せめて!!と思った彼女の気持ちが切ないです。
3回目に行きたい!原作を読みたい!作品です。
償いって? (cinema_61)
2008-04-22 21:13:19
こんばんはシャーロットさん。
私、この映画を観た後のジワーッとくる余韻がたまりませんでした。
いつも思うんですけど、アカデミー賞よりゴールデングローブ賞を受賞した作品のほうがいいのに・・・・。(ブロークバックマウンテンも?)
あの年齢のブライオニーの罪が結果的に一生償わなければならないものになるなんて!
彼女に感情移入して最後は辛かったです。
音楽は確かに少々うるさめでしたが、大好きなドビッシーの「月の光に」が、いいところに入っていて感動でした。シアーシャ・ローナンと監督のジョー・ライトの今後に期待!
Unknown (かえる)
2008-04-23 00:23:24
うるさかったですよねー。(笑)
時代ものは重厚な音楽が定番とわかっちゃいたけど、プラ偏の人だから、もうちょっと軽めかなーと思っていたもので・・・。
というわけで、私はドビュッシーに癒されました。
私もブライオニーにはすぐさま感情移入しました。
でもね、終わってみたら、私はそんなにはどっぷりハマっていたわけでもない感じでした。
たぶん涙は流さなかったような・・・。
ロモーラ・ガライは髪形が違うから、気づきませんでしたわ・・・。
みんなエクセレントな演技でしたー。
Campanulaさん (シャーロット)
2008-04-23 09:32:48
2回ご覧になってるのかしら。納得できなかったのはどんな点?

ロビーが「ブライオニーーーー!!!」って叫ぶシーンがあるではないっすか。私は予告編だけを見て、きっとキーラがブライオニーっていう名の役なんだろうと思いこんでました;
だから、映画をみてから少々混乱。笑

ブライオニーにももうちょっと優しいロビーの目線があったら・・・。彼女は救われたかしら?もっと苦しんだかしら?

もうこうなったら何度も見ちゃってくださーい(笑)私も劇場鑑賞で同じ作品に20回位もはまり込んだ事がありますし。爆
cinema_61さん (シャーロット)
2008-04-23 09:43:16
余韻に浸れたのですねー。ラストはやはり一人の女性の人生の軌跡のたどる重要なシーンだし。歴史や人生を振り返ってその重みをひしひしと感じる事ができると、それは私達の記憶にも残るものですよね。
アカデミー会員は偏屈なんですかね?爆
きっといろんな思惑がグチャグチャと渦巻くブラックホールなんですよっ(あわわ、暴言;)

音楽はできたらもうちょっとピアノ曲だけーとか、抑制して欲しかったなあ…。ドビュッシーは当然グッジョブ。笑
オリジナルより…ラベルとかも使って欲しかったかな。ははは、違っ。
かえるさん (シャーロット)
2008-04-23 09:53:17
はい、うるさかった。笑
予告編からずっとうるさそうだと思っていたので覚悟して見に行きましたです;
プライドと偏見が多分異質なんですよ。ダリオ・マリアネッリの手がけた他作品達をながめるとうるささも納得だったりしました;
でも、監督さんがプラ編と同じ人だから期待するのは当然ですよねっ。むーん。。。
そうですかー、かえるさんはハンカチ使用せずでしたか。ブライオニーを思って、とか、恋愛パート以外で私は泣いちゃった感じでした。
ロモーラ嬢は今回ナイーブな役というか、笑顔がなかった?ような。そういえばナースのお仕事以外のところで笑ってましたっけ?
そうそう、演技はブラボーでしたね♪マガヴォイ君の瞳にはいつもクラクラします。ってそれは演技ではないのか;
首根っこを・・・・・・ (Campanula)
2008-04-23 21:37:32
初見の後は「おい!ブライオニー!小説の中でハッピーエンドにしたからって、お前の嘘が許されるはずはないだろう!」って、首根っこをつかまえて揺さぶりたくなった私です。(午年、O型、ストレートに突っ走ります)
ロビーは死んでしまう予感がしたので、二人の再会シーンも違和感があって変な気分でした。
2回目はストーリーが分かっているので基本的にはブライオニーに感情移入してみていました。
う~ん、ロビーに優しくしてもらったら、もっと悲惨かも・・・・・?

そもそも映画に嵌ったキッカケがLotRなので、リピートは当たり前。(昨年末、某作品は3桁に突入いたしましたから・・・・・)
Unknown (マダムS)
2008-04-24 17:46:38
コンチワ~
久々に新作の感想を書きました(笑;)
ブライオニーのあの歳での過ちで、一生償う運命を背負うなんて可哀相でしたね(TT) というか真相を突き止めようともしない家族は何をしていたの?との怒りも・・。これはやはり原作を読んでみたいですね。
先日急逝されたアンソニー・ミンゲラ監督のお姿にも泣けたりしました(合掌)
Campanulaさん (シャーロット)
2008-04-24 23:05:26
嘘をついてしまった事はいけないことですものね。愛し合う2人の運命を引き裂いた要因のひとつにもなってしまったのだし。
でも私はどうしてもそんな風には思えなくって;こんな昔の上流階級で13歳の少女にとっては過度に卑猥な表現に思えても仕方がない言葉だったのかもしれません。
刺激がありすぎて、嫌悪してしまうというか。
変に正義感が強い時期でもありますしね。
でも、Campanulaさんがはまりこんで何回も見てしまう、何回も見たいと思われるって事は、多分ご自身にも何かひっかかりがあるからなのでしょうね。それが意識的か無意識的かは私にはわかりませんけど。。。
マダムSさん (シャーロット)
2008-04-24 23:21:09
ここではおひさしぶりですー。
私も新作の記事はなかなか書けないのですよ。←見てないから。笑
マダムは旧作にもお強いですし?お忙しいのですから、更新が頻繁でなくても当然ですよ。
お互いに、ぼちぼち、のろーりと続けていきませう♪
そうそう、何かおかしいと誰も思わないところが腑に落ちない点でもありました。真相解明…とかになってくると、「火曜サスペンス劇場」になちゃうから、別にそこまでしなくても…まあまあまあ~と私なら思ってしまうかも。笑
ええっ、アンソニー・ミンゲラ監督って亡くなれたのですか??へ?ホント?

う。


う。


う。

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