渓流で逢いましょう 
フライフィッシングつれづれ日記
 





60センチ以上はあろうかという大きな遡上魚が並んで泳いでいる
手前が雌で奥が雄だろうか 僕の目の前5メートルも無いところを横切った
間違いなくサクラマスだ。
その周りには時折8~9寸程のヤマメも群れている
河口から川通しで100キロもあろうかという上流の淵に、確認できただけで数匹
途中に何箇所もあるダムには魚道が設置されたとは聞いていたし
サクラマスが上がってきているという噂は聞いていた
でも、自分の目でこんな上流でサクラマスを見られるなんて驚きと感動
春から数ヶ月かけて尻別の上流域まで上がってきたわけだ
今年は長雨が続いたことが功を奏したのかは分からないが
わずかながらでも最上流までサクラマスが上がれる状態になったということだけは確かなことだ

ダムや魚道の是非は別にして、尻別が海から山までひとつながりになったのは何十年ぶりのことなのだろうかと思うと鳥肌の立つ思いだった

そのときに対岸に現れた釣り人に大きく声をかけられた
『釣れているか?』と尋ねられたので見ているだけだと答えた
対岸から大物狙いの話やら昔はイトウが釣れたとかヤマメも尺以下はつれない場所だったとか一通り聞かされた
『何を見ているんだ?』と尋ねられたので
サクラマスが上がっている と告げると『本当か??本当か?!』と何度も念を押された。
『爺さんを呼んでくる!!』
と、あわてて今来た道を戻っていくと数分後に米寿を超えているであろうと思われる父親を連れてきた
父親は『こんなことは今までに無い!』と興奮気味で『あんたは釣らないのか?』
と、僕に尋ねる
釣ってはいけない魚だから僕は釣らない と答えたが、聞こえたのか聞こえなかったのか
父親は担いできた大きなスプーンが付いた竿を鱒にめがけて振り出した

ポチャ・・とスプーンが落ちたとたんにサクラマス達は一目散に水底へと姿を消した

おそらく尻別の畔に産まれて畔で育ったのだろう親子
川の衰退を目の当たりにしてきたわけで、この場所にサクラマスの姿を見ることは興奮を覚えることなのだと思うと、それ以上何も言う気にもなれず
僕は帰りますから、と告げて川沿いのもと来た道を戻り始めた
『ごくろうさん!!』と年老いた親子は僕に言った。
釣られませんように・・引っかかりませんように・・
老人に同情しながらもそう願いたい複雑な心境だった。


数尾であろうが間違いなくサクラマスが上がっている事実
いつか最上流までもっと多くの遡上魚が群れる日が来るのだろうか
これから紅葉の頃にかけてサクラマス達は何処で最後の仕事に入るのだろうか
もう釣り人として知らなかったことを理由に言い訳も出来ないのだと思った。

でも尻別のヤマメに海で育った親から生まれた子供たちが混じっていることを知った。
それは本当に本当に嬉しかった。













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