元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「海を飛ぶ夢」

2005-12-11 08:01:28 | 映画の感想(あ行)
 (原題:MAR ADENTRO)事故によって首から下の自由を失った男が、自死の権利を勝ち取るために闘う姿を描くアレハンドロ・アメナバール監督作で、アカデミー外国語映画賞受賞作品。

 実話の映画化らしいが、こういうのは観ていて辛い。半身不随で生きるよりは尊厳死を選びたいという主人公の気持ちはよく伝わるし、彼が空想のうちに空を飛ぶシーンは映像派アメナバールの面目躍如だし、何より特殊メイクで病床の中年男に扮したハビエル・バルデムの存在感は目を見張るものがある。


 しかし、このテーマが“市民運動的シュプレヒコール”ではあっても、果たして“映画”として扱うべきものかどうかは疑問が残る。誰だって主人公のような境遇になれば死にたいと思うだろう。だが、それを堂々と主張してみても“建前として”世間は許さない。どこの国の法律にも“辛いから、自ら命を絶って良い”とは書いていない。しかも、同じく半身不随になりながら立派に社会参加している人間もいる以上(映画が取り上げるべきなのは、主人公よりもそういう人たちであろう)、主人公の言い分がいくら切実でも“建前として”対社会的には意味を成さない。

 だから映画は“あらずもがなの結末”を迎えるしかないのであり、この“筋書きの見えた構図”ゆえに、私はこの作品を評価しない。社会が尊厳死を認めないのが分かっているのなら、自分で“確実に死ねる方法”を巧妙に探すしかないだろう(悲しいことだが)。

 それにしても前回アカデミー外国語映画賞を獲得した「みなさん、さようなら」と、何と似た雰囲気であることよ。アカデミー協会員はこういうネタが好きなのだろうか。

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