元・副会長のCinema Days

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「ペーパーボーイ 真夏の引力」

2013-08-21 06:14:31 | 映画の感想(は行)

 (原題:THE PAPERBOY)退屈極まりない映画だ。フロリダを舞台に、うだるような暑さの中で男と女の爛れた関係が展開するサスペンス劇といえばローレンス・カスダン監督の「白いドレスの女」(81年)を思い出すが、本作はあの映画の足元にも及ばない。とにかく、最初から最後まで作劇が弛緩しきっている。

 69年、フロリダ州の田舎町に住む青年ジャックは大学をドロップアウトし、今では父親が経営する小さな新聞社で新聞配達を手伝っている。ある日、都会で新聞記者をしている兄のウォードが4年前に起きた殺人事件を取り上げることになり、一時的にこの町に戻ってくる。ジャックは彼を手伝うことになるが、今回の取材のきっかけを作った年上の女シャーロットと出会い、心を乱される。彼女は収監中の犯人で死刑囚のヒラリーと文通を重ね、ついには婚約したという変わった女だ。事件の真相が明らかにならないまま、この兄弟は重大なトラブルに巻き込まれていく。

 監督リー・ダニエルズの仕事ぶりがショボくて話にならない。ジャックの荒んだ内面も、ウォードの抱える屈託も、ほとんど表現出来ていない。ミステリアスな雰囲気のシャーロットの扱いも表面だけ。ヒラリーは単なる粗暴な男でしかなく、興味を惹かれるようなキャラクターも付与されていない。

 そもそもこの話はジャックの家のメイドであったアニタの回想によって進むのだが、第三者から語られることによって何か興趣が生まれているかというと、まったくない。演出のテンポはのろく、特になかなか話が進まない前半部分は観ていて眠くなってきた。

 かと思えば、重要なプロットであるはずの箇所の描写が勝手に端折られていたりする。さらにはヘンにドキュメンタリー・タッチを狙ったような、故意にフォーカスをズラしたような画面処理は実に不愉快。映画に動きがある終盤の扱いにしても、サスペンスの盛り上がりは皆無だ。結局、何が言いたいのかよく分からないまま幕が下りる。鑑賞後の徒労感は相当のものだ。

 ジャック役のザック・エフロンに加え、ニコール・キッドマンやマシュー・マコノヒー、ジョン・キューザックといった多彩なキャストを配していながら、誰一人として印象に残るような演技をしていない。特にキッドマンは本作でゴールデン・グローブ賞にノミネートされてたらしいが、「白いドレスの女」のキャスリーン・ターナーとは月とスッポン。ポーズだけの悪女演技など、勘弁して欲しい。

 フロリダの湿地帯の風景だけは興味深かったものの、どう見ても金を払ってまで観るべきシャシンとは思わない。

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