元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「グッバイガール」

2012-04-07 06:17:44 | 映画の感想(か行)
 (原題:The Goodbye Girl)77年作品。マンハッタンを舞台に、ボーイフレンドに逃げられたシングルマザーのヒロインと、その元恋人から部屋を譲り受けたという売れない役者との、奇妙な同居生活を描くハーバード・ロス監督作。主演のリチャード・ドレイファスにオスカーをもたらした映画だ。

 これは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであった劇作家ニール・サイモンの映画である。ウィットに富んだセリフの応酬と、下品にならないスレスレのところで展開される、大仰なギャグの連射とが興趣を生み出す。ドレイファスはさすがの怪演で、特にオフ・オフ・ブロードウェイでリチャード三世を演じる場面はハチャメチャ度100%の盛り上がりを見せる。



 受けて立つマーシャ・メイスンのパフォーマンスもなかなかで、頑張ってはいるのだがどうにも詰めが甘く男に振られてばかりいる冴えない女を、観る者の共感を呼ぶようなチャーミングなキャラクターに昇華させているあたりは見事。さらには子役のクィン・カミングスがめっぽう良い。筋書きは“約束通り”なのだが、テンポの良い演出によりそれが分かっていても引き込まれる。

 関係ないが、公開当時は配給サイドで本作のような映画を“女性映画”と称して一種のブームを仕掛けたような様子が見受けられた。もちろん欧米ではそのような明確なトレンドは存在せず、たまたま女性が主人公になった映画がまとまって製作・公開されたに過ぎない。

 ところが日本だけが“女性映画”なる興行上のキャッチフレーズが成り立っていたということは、洋画のヒロインというものが男の引き立て役としか見られていなかったという、観客の基本スタンスがあったのだろう。今から考えると信じられないが、ほんの30年前でも映画を取り巻く状況は現在とは随分と違っているものなのだ。

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