元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バースデーカード」

2016-11-19 06:52:16 | 映画の感想(は行)

 ベタな構図で“お涙頂戴”を狙った作品であることは分かるのだが、ところどころに興味を持たせるモチーフがあり、最後までさほど退屈しないでスクリーンに対峙することが出来た。たまにはこういう映画も良いかもしれない。

 長野県諏訪市に住む9歳の紀子は泣き虫で引っ込み思案の女の子だったが、そんな彼女をいつも励ましてくれたのは優しい母・芳恵だった。しかし、やがて芳恵は病魔におかされて余命幾ばくも無い状態に。紀子の10歳の誕生日に、芳恵は紀子と紀子の弟・正男が成人するまで毎年手紙を送ると約束する。芳恵がこの世を去り、翌年紀子が11歳の誕生日を迎えたとき、本当に芳恵から手紙が届く。

 以来、毎年届けられる母からの手紙には紀子にとって有意義なアドバイスが書かれていて、そのたびにたくさんの体験を得ることが出来た。しかし20歳になると“いつまでも母の指図通りにはならない”とばかりに反発するようになる。ちょうど紀子にも交際相手が出来て、自分の人生を歩もうとしていた頃だ。だが、母が仕掛けた“粋な計らい”は、手紙だけではなかったのだ。

 序盤、子役の扱い方が恐ろしく下手であるのには脱力した。まるで学芸会レベルだ。また、大して面白いエピソードがあるわけでもない。ならば紀子が中高生になってから観る者を惹き付ける話が展開するのかというと、それも無し。母の故郷である小豆島に赴くシークエンスも、平板な時間が流れるだけ。せいぜい男友達とのアバンチュール場面(?)でラブコメのパロディが挿入され、笑わせてくれる程度だ。

 しかしながら、大学生・社会人になった紀子が小さい頃の母との約束を果たすべく、テレビの「パネルクイズ アタック25」に出るくだりはけっこう盛り上がる。この映画は朝日放送の製作なのでこういうネタを仕入れたのだろうが、番組作りの舞台裏、特に出場者の選抜に関する描写が興味深い。さらに番組進行がよく考えられていて、最後まで結果が読めない。このくだりの後、母親からのプレゼントが明らかになるという展開は悪くない。

 吉田康弘の演出は彼が2013年に撮った「旅立ちの島唄 十五の春」には及ばないが、それほど大きな破綻は無い。出演者の中では芳恵に扮する宮崎あおいのパフォーマンスが図抜けている。若くて優しい理想的な母親像を、一点の違和感も無く演じきっているのには舌を巻いた。さらに、紀子の空想シーンでワンショットだけセーラー服姿が映し出されるのだが、これが尋常では無い可愛さで、彼女のファンは随喜の涙を流すことだろう(爆)。

 対して紀子役の橋本愛は演技面ではまだまだで、さらなる精進を望みたい。また脇にユースケ・サンタマリアや須賀健太、木村多江、洞口依子といった面々が揃うのだが、残念ながら印象に残るような芝居は見られなかった。あと関係ないが、諏訪湖付近の風景は先日鑑賞した「君の名は。」の舞台を彷彿とさせる。もちろん、あの映画はこの地をモチーフにしたものだが、花火大会のシーンなどは共通する部分が多く、観ていて苦笑してしまった。

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