元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ポカホンタス」

2008-10-13 06:51:04 | 映画の感想(は行)
 (原題:Pocahontas)95年作品。17世紀初頭のヴァージニア州を舞台に描くインディアンの娘ポカホンタスと、新大陸征服の野望を抱くイギリス人探検家ジョン・スミスとの人種と文化を越えたラブストーリー。ディズニー33本目の長編アニメーションで、舞台がアメリカなのもディズニーとしては珍しい。

 ハッキリ言ってこういう話は、素材を突っ込んでいくと人種間の確執とか帝国主義の独善とかいろいろシビアーなものが出てきて、ファミリー向けの番組としてはツラいものがある。だがそこはディズニー。上映時間を1時間20分に抑えて、主人公二人に話を絞り、彼らを理解しない探検隊長と部族の長老たちという対立因子を配し、「ロミオとジュリエット」式の単純明解な構図に仕立てている。つまり、ボロの出ないうちに手早く切り上げたのだ。結果、極めて手触りの良い“無難な”映画となっているし、少なくともこの前作の「ライオン・キング」よりはよほどマシである。

 映像の美しさは特筆ものだ。原色を抑え、繊細極まりない中間色を中心に、水彩画のようなシックなタッチで迫る。ヒロインが滝壷に飛び込む場面、川下から大きな白い帆船が上ってくるシーンなどは思わず目を奪われる。見事なCG処理も相まって、開拓前のアメリカの大自然の奥行きの深さを堪能した。画面が平面的になっていないのは、自然の創造物すべてに精霊が宿るという、ネイティヴ・アメリカンの視点から捉えているためだろう。

 アラン・メンケンの音楽は今回も申し分なく、ヴァネッサ・ウィリアムズの歌う主題歌も素晴らしい。字幕なしでも8割方は分かるキレイな英語と、声の出演のメル・ギブソンに似せたジョン・スミスの造形もご愛敬だ。

 でも、この映画が日本では大量のファミリー層を動員できなかきったのも当然かと思う。第一、キャラクター・デザインが日本人向けではない。コメデイ・リリーフとなるアライグマやハチドリの扱いも弱い。それではちょっと大人向けのラブ・ストーリーとして売ろうとすると、単純すぎて物足りないだろう。ポカホンタスはあちらの教科書にも載っている実在の人物。公開時期が生誕400年に当たり、記念式典が行われたそうだ。

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