元・副会長のCinema Days

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アーバン・ウェイト「生、なお恐るべし」

2011-11-25 18:18:48 | 読書感想文
 コーエン兄弟による映画「ノーカントリー」を思わせる重量級のクライム・サスペンスである。ヤバい品物を運んで生計を立てている中年男のハントは、ある日受け渡しの現場を地元の保安官補ドレイクに発見されてしまう。何とかその場は逃げおおせたが、依頼元は失敗の代償として彼に別の仕事を押しつけてくる。

 やむなく引き受けたハントだが、依頼元は口封じのためにその仕事が完了すると同時にハントを消すべく“調理師”と呼ばれる残虐な殺し屋をも派遣していた。一方、運んだ品物の収受を確認するべく麻薬シンジケートも動き出し、ハントの行方を追う。かくして事態は三つ巴・四つ巴の様相を呈するようになり、激しい暴力の応酬が展開する。



 ダイナミックな展開のストーリーラインもさることながら、各キャラクターの“立ち具合”が尋常ではない。作者のウェイトは80年生まれで、本書を手掛けた時はまだ20代だった。そんな若輩者が、ハントが漂わせる“中年の悲哀”を的確に描出しているのには舌を巻く。父親との確執が頭を離れないドレイクの造型や、屈折した“調理師”の内面描写も実に達者なものだ。

 麻薬汚染が隅々まで浸食している米社会の病巣を指弾すると共に、西部劇のような舞台作りにも要注目。この作家の作品は今後も見逃せなくなると思う。

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