元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「孫文の義士団」

2011-06-19 06:53:12 | 映画の感想(さ行)

 (原題:十月圍城)ハッキリ言って、長い。こういう武侠もので2時間20分もの尺が必要であるはずもない。あと30分、ひょっとしたら1時間程度は削れるのではないだろうか。もっとも“これは単なる活劇編ではなく、歴史大作の側面を持っているのだ”との言い分もあるだろう。しかし、真正面に歴史を見据えるにしては描き方が雑でモチーフも下世話に過ぎる。結果として、何とも中途半端な映画に終わってしまった。

 1906年イギリス統治下の香港。清朝打倒を目指す孫文が、各省の同志たちと武装蜂起の密談を交わすために東京からやって来ることになる。それを聞きつけた西太后は、大規模な暗殺団を香港へ派遣。孫文を亡き者にしようとする。頼みの護衛団は事前に暗殺集団の急襲を受けて全滅。事態を憂慮した新聞社社長で中国同盟会の香港支部長と地元の豪商は、有志で義士団を募る。

 生きて帰れる公算が限りなく低いこのミッションに参加する面々を集めるプロセスは、ある意味「七人の侍」に通じる高揚感があるはず・・・・と思ったらアテが外れる。各人が事情を抱えていることは当然だが、その背景への言及が必要以上に饒舌だ。中には、単なる安手のメロドラマや因縁話としか思えないものもあり、しかも語り口が冗長。これらが何と上映時間の半分を占めており、観ていて本当に面倒臭くなってくる。

 そして最大の敗因は、革命の何たるかがほとんど描出されていないことだ。確かに新聞社を勝手に閉鎖させられるなどの行政の横暴はある。しかし、香港の街は活気に満ち、通りを歩く市民からも圧政による暗い影は見出しにくい。そして義士団の面々にしても、清朝に対する鬱屈した思いを抱いている者はあまりいないのだ。新聞社の連中を除けば、彼らは個人的な理由で参加するに過ぎない。これでは歴史のうねりをドラマのバックボーンとして設定することが出来ず、極めて印象は軽くなってしまう。

 それでも中盤過ぎてやっと展開されるアクションシーンは定評のあるテディ・チャン監督だけあり、さすがに優れている。呼吸と段取りに関しても万全だ。ただし、この時代の争いごとには“飛び道具”が使われることは常識だが、出てくるのはボウガンとか刀剣などの前時代的な小道具ばかり。大砲はもちろん機関銃やライフルも出てこない。ラストになってやっと拳銃が出てくる程度だ。これではとても納得出来ない。昔ながらの剣戟を見せたいのならば、何も時代背景を近代に持ってくる必要もないではないか。

 レオン・カーファイをはじめドニー・イェン、ニコラス・ツェー、レオン・ライ、ファン・ビンビンと配役はなかなか豪華。さらにワンポイントでジャッキー・チュンやミッシェル・リーまで顔を出すという大盤振る舞い。香港の街のセットも見事だ。しかし、このように腰砕けの内容ではとても評価は出来ない。

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