元・副会長のCinema Days

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「迷子の大人たち」

2018-09-02 06:12:18 | 映画の感想(ま行)
 (原題:USED PEOPLE )92年作品。設定が面白く、展開も気が利いている。楽しめるソフィスティケーテッド・コメディだ。人生、何歳からでもやり直せる(かもしれない)という本作のポジティヴな姿勢は、観ていて好ましい。

 舞台は1969年のニューヨークの下町クイーンズ。長らく連れ添った夫を亡くしたパールは、葬式の場で元バーテンダーのジョーに突然“好きだ”と告白される。彼は23年前に夫婦の危機を救ったことを切っ掛けに、ずっとパールに恋し続けていたのだ。最初は戸惑う彼女だが、優しく明るい性格のジョーに次第に気持ちが傾いていく。



 しかし、彼女はユダヤ人で、ジョーはイタリア系だ。しかも、パールの家族は肥満のせいか僻みっぽい長女をはじめ、問題児揃い。80歳を超えた姑まで同居しており、パールの悩みは尽きない。それでもジョーの兄が経営するレストランで両家の対面が実現するが、文化の違いから話が全然噛み合わず、ついには全員が掴み合いの大喧嘩を始めてしまう。

 監督のビーバン・キドロンは当時のイギリスの若手女流だが、ソツの無い仕事ぶり(特にセリフの面白さ)に加えて若干引き気味のクールなタッチを保っているあたりが、ヨーロッパの演出家らしいのかもしれない。これが「ディス・イズ・マイ・ライフ」のノーラ・エフロンとか「フライド・グリーン・トマト」のジョン・アヴネットなどの“ハリウッド的予定調和のぬるま湯”(?)にどっぷり漬かった監督が手掛けたら、退屈な作品に終わっていただろう。

 誰が観てもハッピーエンドは予想が付くのだが、それが決して欠点にはなっていない。何しろ出ている面子が豪華で、それぞれが持ち味を発揮しているのだから、その名人芸を見るだけで入場料のモトは取れるだろう。主演のシャーリー・マクレーンはコミカルな振る舞いにも違和感が無く、余裕のパフォーマンスだ。ジョーに扮するのがアメリカ映画初登場のマルチェロ・マストロヤンニで、とことん前向きなイタリア男を楽しそうに演じる。

 さらにはジェシカ・タンディ、キャシー・ベイツというオスカー俳優も彩りを添え、マーシャ・ゲイ・ハーデンのコスプレ演技も愉快だ。レイチェル・ポートマンの音楽は万全だ。なお、設定は60年代だが、時代色を出すためカナダのトロントで撮影が行われたというのは興味深い。

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