元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マクマホン・ファイル」

2020-03-06 06:16:51 | 映画の感想(ま行)
 (原題:THE LAST THING HE WANTED)2020年2月よりNetflixで配信された社会派サスペンス映画。キャスティングが悪くなかったので見てみたが、何とも冴えない出来だ。後でネットの評判をチェックしたところ、本国では酷評されているらしい。映画鑑賞にはある程度の“事前リサーチ”は必要であると、改めて思った次第である(笑)。

 80年代前半、米国のジャーナリストであるエレナ・マクマホンは、ニカラグアで反共ゲリラの活動を取材していた。ところが、政府当局の“事情”により圧力が掛かり、彼女は中米での仕事を取りやめることを余儀なくされる。そんな折、エレナに父親のリチャードが緊急入院したという知らせが届く。

 ヤクザな生活を送り、別れた妻の訃報も知らなかったという極道者だが、エレナには今更ながら“やり遂げなければなかった取引があるので、代わりにやってくれ”という無理な注文をつけるのだった。仕方なくエレナは取引を実行するため中米コスタリカに密入国するが、その取引とは武装組織への武器供与だった。しかも、その“代金”は麻薬である。いつの間にか彼女は、大きな陰謀に巻き込まれていたのだ。

 原作者のジョーン・ディディオンは有名作家らしいが、この映画化がどの程度元ネタを反映しているのかはわからない。しかしながら、本作は随分と雑な仕上がりである。序盤はマジメに中米の軍事情勢をリポートし、筋を通すためには上司とも遣り合う正統派のジャーナリストとして描かれるヒロインが、いくら父親の頼みとはいえ、危ない橋を渡る理由が見出せない。

 だいたい、正常な判断力を持った者ならば、取引のブツが重火器だと判明した時点でとっとと退散するはずだ。それなのにエレナはよほど金に困っているのかどうか知らないが、どんどん危ない道にハマり込んでゆく。ジャーナリストとしての矜持も、どこかに置いてきたらしい。

 彼女を取り巻く“陰謀”とやらもハッキリせず、現地の武装組織やらCIAやらフランス情報部やらが脈絡もなく行き来するばかりで、その実体がまったく掴めない。ワケの分からない連中に翻弄された挙句、不本意な結末に追いやられるエレナには、とても感情移入は出来ない。時代設定を80年代にした意図も、いまひとつ不明だ。

 ディー・リースの演出は冗長で、ポリティカル・サスペンスらしい緊張感は見当たらない。ドラマの交通整理も出来ず、各キャラクターの性格設定も名覚束ない有様だ。主演のアン・ハサウェイは頑張ってはいるが、彼女に合った役柄とも思えない。ベン・アフレックは大根に見えるし、何かやらかしてくれそうなウィレム・デフォーも見掛け倒しに終わる。音楽・撮影とも特筆できるものは無く、失敗作と言われても仕方がない内容だ。

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