元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シャンドライの恋」

2019-04-12 06:38:57 | 映画の感想(さ行)
 (原題:L'assedio )98年作品。昨年(2018年)に世を去ったベルナルド・ベルトルッチ監督は“巨匠”という評価が確定しているようだが、個人的には「1900年」(76年)あたりがキャリアのピークだと思っている。それ以降の作品はどうにもパッとせず、大ヒットした「ラストエンペラー」(87年)も私はあまり評価していない。本作も例外ではなく、上映時間は短いが観ている間はとても長く感じられる。

 政治活動をしていた夫が逮捕され、逃げるようにイタリアに渡ってきたアフリカ出身のシャンドライ。音楽家キンスキーの屋敷に住み込み、掃除係として働きながら医大に通うことになった。ある日彼女は、クローゼット代わりに使っているリフトがキンスキーの部屋と繋がっていることを発見する。



 その後、リフトを通じてキンスキーから花束や指輪が贈られてきた。困惑したシャンドライはキンスキーに真意を問いただすと、相手から思わずプロポーズされてしまう。独身のキンスキーは、彼女に好意を抱いていたのだ。驚いた彼女は“私が欲しいのならば、獄中にいる夫を出して”と、つい口走ってしまう。イギリスの作家ジェイムズ・ラスダンの短編の映画化だ。

 セリフが少ないのは、過剰な説明を排して内容を観る者の想像力にゆだねるということなのだろうが、本作は重要なモチーフが提示されておらず、散漫な印象しか受けない。そもそも、どうしてキンスキーがシャンドライを好きになったのか、描かれていないのだ。前振り抜きに、いきなりプロポーズされても面食らうばかり。

 しかも、後半にはキンスキーは身を挺してシャンドライの夫を救おうとしていることが示されるのだが、その切迫した心理も提示されない。螺旋階段の撮り方をはじめ映像はかなり凝ってはいるのだが(撮影監督はファビオ・チャンケッティ)、しばらく観ていると奇を衒っていることが見透かされ、何だか鬱陶しい気分になってくる。

 主演のタンディ・ニュートンとデイヴィッド・シューリスは健闘していて、アレッジオ・ヴラドの音楽も素晴らしいのだが、それだけでは内容を押し上げる要素にはならないのは確かだ。

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