元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「パイレーツ・ロック」

2009-11-09 06:24:51 | 映画の感想(は行)

 (原題:The Boat That Rocked)全然面白くない。66年のイギリス、国営BBC放送がポップ・ミュージックのオンエアを一日40分に制限し、全英の音楽ファンのフラストレーションは溜まる一方。そこに登場したのが、公海上に停泊した船の中から24時間音楽番組を流すという、海賊版の放送局だ。それを苦々しく思っている当局側は取り潰そうとあらゆる手段を講じるが、懲りない反骨精神旺盛なロック野郎たちは反撃に出る・・・・というのがメイン・プロット。

 こういうネタならばいくらでも盛り上がりそうなのだが、想像を絶するほどの白々しさが全編を覆う。要するにこれ、ラジオ局を開設してチャラチャラ遊んでいる軟派な奴らの、どうでもいいような与太話を漫然と垂れ流しているだけなのだ。取り締まろうとする政府との丁々発止としたやり取りや、スポンサー獲得の裏話とか、音源を確保するための苦労談など、使えそうなモチーフはいくらでも転がっているはずなのに、見事に何もやっていない。そもそも肝心の音楽ネタ自体が不発なのだから、あとは推して知るべしだ。

 当時流行していた綺羅星のごときポップ・チューンの数々を、困難を克服しつつも登場人物達が想いを込めてリスナーに届けようという、その熱いパッションがまったくない。アメリカから呼んできた人気DJと、長いブランクの後に復帰した大物DJとの確執なんか、アメリカン・ロックVSブリティッシュ・ロックの図式で思いっきり気勢を上げてもいいはずだが、それもなし。あるのはただグダグダした笑えないシークエンスの羅列。しかも2時間を超える上映時間。後半は眠気を抑えるのに必死だった。

 フィリップ・シーモア・ホフマンやビル・ナイといった演技陣は精彩無し。ケネス・ブラナーも何やってんだか分からない。ヒロイン役のタルラ・ライリーが可愛かったぐらいで、あとは印象希薄だ。監督のリチャード・カーティスは、マジメに仕事をやっているとは思えない。とにかく語る価値もない愚作だ。

 本作で唯一考えさせるところがあるとすれば、エンドクレジットの前に出る“現在イギリスでは300近くの音楽専門ラジオ局がある”というコメントだろう。あの島国にこれだけ多くの音楽専門局が存在する。対して日本はどうなのだ。これだけの人口を抱えているのに、実質的な音楽専門ラジオ局なんか一つも無いのではないか。愚にも付かないトークでお茶を濁す低レベルの局ばかり。

 この背景には、私もかねてから言ってるが、日本人は音楽が好きではないことがあると思う。音楽が好きならば、音楽専門ラジオ局が存在しないことに耐えられないはずだが、日本人はそうではないのだ。音楽後進国たる我が国の実状を再確認するような幕切れで、暗澹たる気分で劇場を後にしたのであった(-_-;)。

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