元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ミックマック」

2010-10-22 06:33:44 | 映画の感想(ま行)

 (原題:MICMACS A TIRE-LARIGOT)ジャン=ピエール・ジュネ監督らしい作品だと言えばそうなのかもしれないが、マンネリズムが漂っていて評価する気にはなれない。

 個人的に彼の最良作は「アメリ」(2001年)だと思っている。あの映画の優れている点は、ストーリーの立脚点がとても普遍的であるところだ。この監督を語る際に必ず言及される巧みな映像ギミックの数々が、「アメリ」では平易な主題を盛り上げる小道具として十分に機能していた。しかし、この新作ではテクニックだけが先行している。

 ビデオ店で働く主人公バジルは発砲事件に巻き込まれ、強盗が発射したピストルの弾を頭に受けてしまう。何とか回復はしたものの、銃弾は依然頭の中に留まっている。そして退院してみると仕事も家もない。

 得意のパントマイムでその日暮らしをしていたところ、偶然にヘンな廃品回収のグループに加わることになる。ある日彼は、頭の銃弾の製造元である兵器会社と、そのライバル会社でありバジルの父親を死に追いやった地雷を手掛けた武器メーカーの存在を知る。彼は仲間と一緒に復讐に乗り出す。

 観ていて困ったのは、この“死の商人に天誅を下す”というストーリーラインが、反戦という“取って付けたようなテーマ”に追随するものでしかない点だ。

 これがイラク戦争の当事者であるアメリカとか、現場であるアラブ諸国とか、はたまた政情不安なアフリカの国々を舞台にしていたならば少しはドラマに緊張感が生まれたかもしれないが、あまり関係のない(少なくとも一般世間ではそう思われている)フランスの国内でドタバタやっても全然ピンと来ないのだ。穿った見方をすると、キッチュな映像を全面展開させるために無理矢理デッチ上げたネタだとも言える。

 廃品回収の集団の面々は奇人揃いで、それぞれの得意技で「スパイ大作戦」ばりにミッションを遂行していくのだが、どれも外見の面白さばかりが目立ち、キャラクターそのものの屹立ぶりには貢献していない。有り体に言えば、過去のジュネ作品に出てきた連中の焼き直しみたいだ。

 それでも主役のダニー・ブーンをはじめとするキャストは頑張っているし、永田鉄男のカメラによるレトロ・モダンな映像美は見所たっぷりである。ラファエル・ボーの音楽も良い。ただ、どのモチーフも足元を見られたように浅くて軽いのだ。観た後はすぐに忘れてしまうようなライト感覚ばかりが横溢している。次回はもうちょっと深みのあるネタの掘り下げ方をして欲しいものだ。
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