元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「沙羅双樹」

2007-07-06 07:01:16 | 映画の感想(さ行)
 2003年作品。第60回カンヌ国際映画祭にて「殯(もがり)の森」で審査員特別賞を受賞した河瀬直美監督の、ひとつ前の映画だ。残念ながら出来としてはまことにくだらない。

 奈良の旧市街「ならまち」を舞台にした家族ドラマ。河瀬直美は長編デビュー作「萌の朱雀」でカンヌ映画祭のカメラドール賞を受賞している。「萌の朱雀」も家族劇だったが、登場人物の複雑な関係が整理されていないという欠点を補って余りある映像の喚起力に圧倒されたものだ。あの映画を観て私は“河瀬監督は映像主導の癒し系作家なのだろう”と思った。この作品でも映像派作品を印象付けるためか冒頭クレジットに撮影監督の名前を一番に持ってきているが、映画自体の出来は実に低調。

 結論から言うと「映像でカバーできないほどドラマ部分が脆弱である」そして「ドラマをフォローできないほど映像も凡庸である」ことに尽きるのだ。たとえば、双子の兄弟の片方が子供の頃に行方不明になり、10年後に警察から「見つかった」との連絡が入るのだが、いったい彼がどうなったのか映画の中では全く説明されない。そして、一家の主がどういう職業に就いているのかも不明だ。このあたりを作者は「観る者の想像にまかせる」と割り切っているのかもしれないが、作劇上重要なプロットを省略してどうするのだろう。何やらこの作家には「ストーリーを語る」という映画作りにおける基本を恣意的にネグレクトしているようなフシがある。

 自己満足の長回し映像の垂れ流しだけでは観客に何もアピールできるわけがない。そしてその映像も、昔のNHK「新日本紀行」の二番煎じとしか思えない低レベルなもの。さらに重要な役で「監督自身」が涼しい顔で出演し、大して上手くもない演技を堂々と披露しているに至っては、「恥知らず」という言葉で形容するしかない醜態だ。まあ、これよりヒドい映画はそうないので、話題の「殯(もがり)の森」は少しはマシになっていると期待したい・・・・と思っているのだが・・・・(汗 ^^;)。

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