元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「オスカー」

2008-09-04 06:40:54 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Oscar )91年作品。この当時、コメディ路線も順調に歩んでいたシュワルツェネッガーに対抗したのかどうか知らないが、シルベスター・スタローン主演のコメディ作品である。時代は1920年代、スタちゃん扮するギャングのボスが父親(カーク・ダグラス)の遺言に従ってカタギになろうと努力する。しかし世間はそう甘くない。大犯罪の偽装工作だと怪しむ警察当局やスキを窺う対立組織、加えて娘の結婚騒動までからんで事態は思わぬ方向へ動き出す。

 監督は「大逆転」や「スパイ・ライク・アス」などのジョン・ランディスだが一流とは言えないこの監督の作品にしては出来はいい方である。ドタバタ・コメディかとの予想は見事に外れ、巧みなシチュエーションで笑わせるフランス喜劇のセンを狙っている。冒頭のタイトルバックにロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」のアリアを歌う人形アニメが挿入されていることからもわかる通り、「フィガロの結婚」にヒントを得て作られたことは明白で、それを活かす脚本がよく出来ている。特に、宝石と札束と下着が入った3つの鞄が間違われてあちこち移動するあたりのギャグには感心させられた。

 脇のキャラクターがいい。“悪名クリーン作戦”に乗り出すボスの気持ちも知らずヤクザ気分の抜けない子分達や、どこかアブナイ仕立屋の2人組、強いカミさん、ノーテンキな娘、調子のいい経理士など、役の扱い方も申し分ない。そして何より題名の「オスカー」なる人物がちっとも主要なキャラクターでないというのには驚いた。

 しかし、よく考えるとこれって主役がスタローンである必要性などまるでないということに気づく。もっとスマートでユーモアのセンスがある二枚目俳優がやった方がよい。ハッキリ言って芸達者なキャストの中にあってスタローンだけ浮いている感がある。珍しくソフィストケートな喜劇に挑戦したスタちゃんの意欲は買うにしても、それがかえって彼の芸域の狭さを露呈してしまうとは皮肉なものである。結局「ランボー」や「ロッキー」に戻ってしまった昨今の彼の様子を予言したようなシャシンだ。

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