元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フィール・ザ・ビート」

2020-09-04 06:28:21 | 映画の感想(は行)
 (原題:FEEL THE BEAT )2020年6月よりNetflixで配信。絵に描いたようなスポ根仕立てのシャシンで、探せば欠点も少なからずあるのだが、約束通りのストーリー展開と明るい雰囲気で十分に楽しませてくれる。キャラクターの配置の上手さ、およびキャストの好演、さらに107分というあまり長くない尺と、観て損はしない御膳立てだ。

 主人公のエイプリルはブロードウェイでダンサーとして成功することを夢見ており、その朝もオーディション会場に急いでいた。ところが途中で老齢の婦人を邪険に扱ったところ、偶然その人がオーディションの審査委員で、おまけにケガまでさせてしまう。失意のうちに実家のあるウィスコンシン州の田舎町に戻ったエイプリルは、地元の知り合いから子供たちの指導をしてくれと頼まれる。彼女は最初は全然乗り気ではなかったが、近々おこなわれるダンス競技会の全国大会の審査委員長がミュージカル界の大物であるということを聞きつけ、急遽インストラクター役を買って出る。



 とにかく、エイプリルはイヤな女だ。他人を押しのけて自分だけが目立とうとする。高校時代に付き合っていた彼氏を、自身の人生の目標のために簡単に捨てる。仕方なく引き受けたダンス講師も、教え方が自分勝手で、さらには子供たちにヒドいあだ名を付ける始末。こんな奴が“改心”するのは並大抵のことではないと思うが、実際はあまり苦労せず、周囲の人々の善意で何とか乗り越えてしまう。

 それでも終盤ではエゴイストぶりを発揮して子供たちを呆れさせるが、映画の序盤と比べればいくらか彼女の成長の跡が見られるのだから苦笑する。そして肝心のダンスシーンも、大したものとは思えない。しかしながら、落ちこぼれ達が奮起して努力を重ね、大舞台で活躍するというスポ根の鉄板のルーティンを見せられると、まあ良いじゃないかという気になってくるのだから、我ながら単純なものだ。

 この映画ではヒロインよりも周りのキャラクターが“立って”いる。抱擁感のある父親や、性格が良い元カレ、仕事熱心な地元のダンス講師、個性派揃いの子供たちと彼らを支える町の人々、みんな好感度が高い。それらが主人公の難のあるパーソナリティを巧みにカバーして、映画を盛り上げる。中でも、ステージ上でメンバーがピンチに陥ったとき、飛び入りで参加して喝采を浴びる最年少の男の子には参った(笑)。

 エリサ・ダウンの演出は才気走ったところは無いが、スムーズにドラマを進めている。主演のソフィア・カーソンをはじめウォルフガング・ノヴォグラッツやドナ・リン・チャンプリン、エンリコ・コラントーニなど、俳優陣は芸達者揃いだ。

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