元・副会長のCinema Days

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「合衆国最後の日」

2019-02-10 06:27:58 | 映画の感想(か行)
 (原題:Twilight's Last Gleaming)77年作品。骨太の娯楽映画を得意としていたロバート・アルドリッチ監督は、本作のようなポリティカル・スリラーを手掛けても、実に鮮やかに決める。上映時間は2時間半と長いが、息切れすることなく最後まで楽しませてくれる。

 1981年11月。元空軍大佐のデルとその仲間は州刑務所を脱獄。モンタナ州のミサイル基地に侵入した。デルはこの基地の設計者であったが、反体制的な言動で政治犯として投獄されていたのだった。彼は軍当局に、ベトナム戦争当時の国家機密文書の公表と国外逃亡資金の用意、そして逃亡が完了するまで大統領が人質になることを要求する。



 司令センターの責任者マッケンジー将軍は基地内に部隊を展開させるが、事態を察したデルはミサイルの発射ボタンを押した。大統領はデルの要求を呑むことを通告し、ミサイルは飛び立つ寸前で止まる。自ら人質になるため現金を持って出向いた大統領だが、何とかして機密文書の公開を避けたいマッケンジーは、無謀な行動に出る。ウォルター・ウェイジャーによるサスペンス小説の映画化だ。

 時代設定が製作年度の数年後になっていることがミソだと思う。つまりは当時としての“近未来”の話であり、70年代以降に日本などの先進工業国との貿易赤字に悩まされ、見通しが暗くなった彼の国の“末路”が描かれていると言える。経済が不安定になると軍部の台頭を懸念する向きが多くなるらしく、本作では情報を握り潰した挙げ句に国家の主権も蔑ろにする軍の横暴がシビアに捉えられているのが興味深い。

 アルドリッチの演出は弛緩したところが無く、プロットの運びは強固だ。特徴的なのが画面分割で、それぞれのパーツを追うのは難儀だが(笑)、緊張感を増すのに貢献している。ラストの処理はちょっとした驚きで、西ドイツの資本が入っていたことも大きいのかもしれないが、脳天気なハリウッド大作と一線を画する扱いは実に面白い。

 デル役のバート・ランカスターをはじめ、リチャード・ウィドマーク、バート・ヤング、ジョゼフ・コットンなど、キャストは重量級を配しているのが嬉しい。個人的に印象的だったのが大統領に扮するチャールズ・ダーニングで、正義感が強く情に厚い人物像を上手く表現していた。ジェリー・ゴールドスミスの音楽は効果的だし、ビリー・プレストンによる主題歌も悪くない。

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